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【追悼書評】臨床の原点は患者を理解する姿勢。著者 丹澤章八先生「改訂版 鍼灸臨床における医療面接」が教えてくれたもの

公開日:2025年11月21日

丹澤章八先生の訃報を受け、心からの哀悼の意を表します。

「改訂版 鍼灸臨床における医療面接」の著者である丹澤章八先生が長年にわたり示された卓越したご貢献は、業界に多大な影響を与えてきました。

丹澤先生は、1929年東京に生まれ、1951年信州大学松本医学専門学校(現信州大学医学部の前身)を卒業し医師となりました。産婦人科医として臨床にあたった後、1959年厚生技官を経て、以後13年間製薬業界実業家に転身。医師復帰し米国から日本に導入されて間もなかったリハビリテーションに注目。1976年には上海市革命委員会の招きを受けて、日本医師団の13名の一人として上海中医学院(現上海中医薬大学)へ留学し、現代中国鍼灸医学・医療の研修を受け、帰国後は、鍼灸医療(東洋医療)をリハビリテーション医療(現代医療)に導入。東西統合医療の先駆的実践者として活動されました。

1991年に日本で初めての鍼灸学研究科修士課程の設置である明治鍼灸大学(現明治国際医療大学)大学院の教授となった後、都道府県知事免許であったあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が1992年に厚生労働大臣免許(国家資格)に変更されるにあたり、厚生省審議会委員、あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師国家試験ワーキンググループ座長を経て同試験委員会委員長を務め大きく貢献しました。

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師国家試験委員長も歴任。東洋鍼灸専門学校校長、日本最大規模の鍼灸学術団体である全日本鍼灸学会の会長を務めるなど、現在の鍼灸業界の発展は、丹澤先生の存在なくして語ることはできません。

丹澤先生の著書「改訂版 鍼灸臨床における医療面接」は、盲学校の教科書として【拡大版】でも発行され、2002年7月発刊から改訂を経て鍼灸師の臨床の原点となるべく、これまで多くの治療家に読み継がれてきました。

本書の序で丹澤先生は、次のように述べています。

『病者は、苦しみ・痛み・悩みをいっぱい詰め込んだ、見えないリュックを背負って医療の門をたたきます。まずは、リュックの中身を取り出すことが医療者の役目です。その役目を果たす行為が、患者・医療者がお互いに「信」を基盤としたコミュニケーションの上に展開される医療面接です。考えてみてください。リュックが空になったらどんなに楽になるでしょう。あらためて、医療面接が基本的医療行為であることは多言の説明を要さずとも、理解・認識していただけるでしょう。』『本書が「患者中心の医療」実践者にとって、末永く袖珍(しゅうちん)の書として傍らにあることを、只管(ひたすら)に願ってやみません』

丹澤先生の長年の豊かな知見とご経験が惜しみなく注ぎ込まれた本書は、今後の治療の道しるべとなることでしょう。

書籍「改訂版 鍼灸臨床における医療面接」について

 「医療面接は問診とどこが違うの?」「患者さんと信頼関係を築く秘訣は?」「特定の患者さんの対応が苦手…」これらの鍼灸臨床における疑問を解決してきた不朽の名著「改訂版 鍼灸臨床における医療面接」の改訂版です。

初版は1万5,000部以上を記録。今もなお多くの鍼灸師に読み継がれている医療面接のバイブルです。

現代鍼灸臨床にあっては、患者中心の医療を実践するにあたり、患者との良好なコミュニケーションの構築がもっとも大切であり、良好なコミュニケーション構築の働きを担う医療面接は、臨床的意義としても重大です。

本書は、第一線で活躍されている鍼灸臨床家の方々も対象の視座に大きく捉えた内容となっており、理論よりまずは実践を主眼に置き、冒頭に実践編を据えています。

新人・ベテラン鍼灸師まで、よりよい臨床を行うための基礎となる必携の書であり、医療面接に対する理解と臨床における意義の深さについての認識を深め、全人的医療の実践者として活躍する素地の形成に役立つ1冊です。

丹澤章八先生を偲んで|株式会社フレアス 代表取締役社長 澤登 拓

当社学術顧問の丹澤章八先生が、2025年11月5日にご逝去されました。
謹んで哀悼の意を表します。

丹澤先生は、厚生労働省において、あはき試験を都道府県免許から国家試験制度へ改革した中心的役割を担われ、鍼灸マッサージの専門性と社会的地位の基盤を築かれました。また、日本で初めて医師として中国に鍼灸留学し、東西医学の架橋に取り組んだ先駆者でもあります。

教育者としては、「患者を理解する姿勢こそが臨床の原点である」という信念に基づき、多くの施術者・研究者・教育者を育てられました。今日、全国の教育現場で先生の教え子たちが校長・教員として活躍していることは、その思想が確かに受け継がれている証です。

『改訂版 鍼灸臨床における医療面接』は、臨床における「面接」を患者の声に耳を澄まし、相手の背景や痛みの文脈に寄り添うための“関係形成の核”として位置づけた一冊です。

本書で語られる面接は、情報収集の手段ではなく、患者が自ら回復への力を取り戻していく過程を支えるための「寄り添いのかたち」です。

施術者としての技術・診断・知識はすべて、
相手に向き合い、理解しようとする姿勢の上に成立する——
その丹澤先生の臨床哲学が、この書には明確に息づいています。

この本は、治療とは「人と向き合う営み」であるという原点に立ち返るための、時代を超えて読み継がれるべき本です。 

書籍「改訂版 鍼灸臨床における医療面接」の詳細

書籍紹介記事はこちら
【書籍紹介記事】患者中心の医療を実践する鍼灸師のバイブル!「改訂版 鍼灸臨床における医療面接」

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