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よくわかる経絡治療 実践トレーニング

基本の技術を磨く実践的な「台本」!

本書では、「効く鍼」「痛くない鍼」をうつためのコツや手順、練習法をシステマティックに解説。ポイントを押さえて理解をし、すぐに実践することができます。また、経絡治療の補法、瀉法の使い分けもイラストで丁寧に説明しています。ドリルページでは、タオルを使った軽擦、取穴をスムーズにする練習や、押し手のつくり方、気の至りを感じるための練習方法を紹介。やみくもな練習ではなく、目標を明確にして、効率的に取り組めます。

よくわかる経絡治療 脈診ワークブック

ISBN978-4-7529-1402-0
著者大上勝行
仕様B5判 128頁
発行年月2018/1/20
価格4,730円(税込)

目次

1章 姿勢を整える
2章 取穴
3章 押し手と刺鍼の基本
4章 鍼の効かせ方
5章 手技の選択
6章 実際の治療





『はじめに』ーまず型をつくるー

■名人になりたい!

私たちは、何に向かって日々精進しているのでしょうか?

私は、「より多くの患者さんを治したい」、「より早く治したい」という思いで勉強をし、練習をし、日々の臨床に向かっています。


もうひとつ、私には「名人になりたい」という思いがあります。せっかく鍼灸という技術を学んだのだから、できるだけその技を極めたいと思っています。それがまた多くの患者さんを治すことにも繋がるはずですから。

その目標として、数々の先人・名人の存在があります。今まで師匠の池田政一先生をはじめとして、いろんな名人の技に触れてきました。そうした人達に一歩でも近づきたい、自分もあのようになりたいと思ってやってきました。

ところで「名人の鍼」というのはその効果もさることながら、手際がよく、鮮やかで、美しく、芸術的にも見えます。名人は脈を診る姿すらも美しいのです。

しかし、ときに名人の鍼は理解不能でもあります。それは手が早いからだけではなく、何をしているかすらわからないことがあるのです。同じ経絡治療の鍼灸師でありながら、「配穴の意味がわからない!」「なぜか太い鍼をブスブスと刺している!」etc......。

このように、名人芸と普段自分がやっている経絡治療とが結びつかないことがあるのです。これはどうしてなのでしょうか?

それは名人には日々発見があり、日々進歩しているからなのです。名人は数十年の臨床研究の間に、発見し、積み上げ、そぎ落とすことを繰り返して、現在のスタイルを形成しています。ですから名人を理解し、その技を習得するのは一朝一夕にはいかないのです。

名人の手技をただ猿まねしても、同じような成果は得られません。

もし同じようにしようとするならば、名人に弟子入りして10年以上の年月を費やさないといけないでしょう。長年師匠のそばについて、まさしく見習って身につけていくものなのです。

しかしそれは誰にでもできることではありません。では、誰もが名人を目指せるようにするにはどうしたらよいでしょうか?


■基礎を積み重ねる

名人への道は、もうひとつあります。それは、まず基礎から一つひとつ積み上げることです。そばで見習うことができない分、まず基本技術をしっかり身につけ、盤石な土台をつくります。

そうしてその後、試行錯誤や取捨選択を行い、自分の目指すものを見つけ、自分の型をつくっていくのです。

本書では基本動作を丁寧にマニュアル的に列記し、チェックしやすいようにしています。こうした一見簡単そうに見える細かい技術や基礎、意識の積み重ねが、結果としてしっかりとした上質な技術を身につけることに繋がります。

多くの名人の神業は、天才を別にして、必ず基本的な技術の裏づけから成り立っています。

私の師匠も、私が入門した1990年頃は非常にシンプルでオーソドックスな治療をしていました。脈を診て、本治法をして、腹臥位で置鍼して、最後に温灸や散鍼で仕上げ......といった、経絡治療のお手本のような治療です。

現在でももちろん脈診や本治法を大切にされていますが、患者さんや病状によって合わせた選穴・手技を取り入れ、バラエティにとんだ治療をしています。

ずっとそばで見てきたものとして、これはやはりしっかりとした基本技術があるからこそなせる技だと感じています。

■理論と実践

何でもそうですが、やみくもに練習すればするほど上手になるという訳ではありません。

テニスでも、まずはラケットの握り方を教わり、フォアハンド、バックハンド、サービスといった基本技術をマスターし、さまざまな練習を経て、ようやくゲームができるのです。ただラケットを振り回しているだけでは、ゲームができないばかりか、満足感も得られないでしょう。

合理的で意味のある身体の使い方を理解して意識し、その上で反復練習し、身体に覚え込ませるほうが、ただ単にやみくもに練習するよりも、はるかに技術の習得が早くなります。

この本ではどのような手順で鍼をうつかということが、基本から書かれています。この本を読んで、その手順をまずは身につけ、やってみてわからないところや、うまくいかないところはもう一度読むというふうにしていただければ、より早く上達すると思います。


■繰り返し

手順を身につけるというのは、本を読んで覚えて「ハイ終わり!」というものではなく、文字通り身体に覚え込ませるということです。鍼灸は手先の職人芸ですから、頭で理解していても、実際に実現できないと意味がありません。

頭で考えて理解し、身体を動かし、また頭で考えるのです。この繰り返しが上質な理論、技術に繋がります。

本書もまた繰り返し読むことで、基本の姿勢から取穴、刺鍼に至るまでの一連の流れをステップアップ方式で身につけられるように構成されています。経絡治療の理論をイメージしやすいように、イラストもできるだけ多くいれています。繰り返し読んで頭に叩き込めば、治療のときに経絡治療のイメージが浮かんできて、治療の一助になるはずです。

ページサンプル

著者インタビュー

――『よくわかる経絡治療実践トレーニング』、『よくわかる経絡治療実践トレーニング脈診ワークブック』2冊同時発刊おめでとうございます。本書は、主にどんな方に読んでいただきたいですか?

大上『実践トレーニング』の内容は、いままで講習会で指導してきたことをまとめたものです。前半部分は、取穴や刺鍼技術の解説に大きく割いています。このあたりは、経絡治療の初心者はもちろん、臨床に経絡治療を取り入れていない鍼灸師の方にも参考になると思います。
みなさん、意外と基礎がおろそかになっているところがあります。素晴らしい技術も小さな基礎の積み重ねです。そのあたりを再チェックしていただきたいです。

『実践トレーニング』の後半は「いかに鍼を効かせるか」の解説です。補瀉の技術について、細かく分類・整理して説明しています。目に見えない「虚実」という概念を理解し、その補正を「補瀉」という手技で実現するという感覚的で捉えどころのないものを、できるだけイメージしやすく、形にできるように解説しました。経絡治療の定型をマスターし、次のステップを目指している方に読んでいただきたいです。
大上『脈診ワークブック』は、脈診という感覚的で形にできないものを、「脈図」をつけることにより可視化して理解しやすくしました。脈診初心者や、いままで何度か脈診にトライして挫折した方におすすめです。
大上経絡治療といえば六部定位脈診ですが、そこに祖脈診・脈状診をどう取り入れていくか、どう利用するか、についても丁寧に解説しています。病理病症を理解するには祖脈診・脈状診が必要になります。脈診の基礎から順序立てて書いているので、学生のみなさんも、ぜひお読みください。
――臨床に生かしやすいように、意識して執筆されたポイントなどありますか?
大上経絡治療のいいところは、初心者には初心者の経絡治療があり、上級者には上級者の経絡治療があるということです。そしてそれは、小さな知識・スキルのひとつひとつを学習や修行によって積み上げることで、段階的に身についたものだと思います。
『実践トレーニング』も『脈診ワークブック』も、それぞれ実技・脈診について、初歩から細かく丁寧に説明しています。初心者はもちろん、中級・上級の人にも再発見や再確認でき、普段の臨床に取り入れていただけるよう意識して書きました。

――『図解よくわかる経絡治療講義』発刊から3年、大上先生の中でさらなる発展があった、技術や理論などがあれば教えてください。

大上夏期大学などで、毎年講義するたびに新しく発見したことを加えたり、取捨選択したり、順番を変えたり、バージョンアップを繰り返してきました。
『実践トレーニング』では、陰陽虚実の程度や質と補瀉の技術の組み合わせについて、より細分化して説明しています。
また、『脈診ワークブック』では、それぞれの脈状についての解説を詳しくするだけではなく、病症の変化との関係についても言及していますので、病症病理の理解にも役立つと思います。
これは講義の受講生との質疑応答などを経て、必要な情報をどんどん加えてブラッシュアップした結果かと思います。
――最後に一言お願いいたします。

大上「経絡治療」と銘打ってますが、その他の流派の方にも参考になると思います。経絡治療初心者、経絡治療の次のステージを模索している方、経絡治療を色眼鏡で見ている方、いろんな人に読んでいただきたいです。きっと「経絡治療」のイメージが変わると思いますよ!