マンガ 鍼灸臨床インシデント増補改訂版 覚えておきたい事故防止の知識
新たに4話、40P増の増補改訂版!
付録に危険予知トレーニング(KYT)を収録
臨床の現場でいつ起きるかわからないヒヤリハット。「これまで事故なんて起きたことがないよ」という人も、たまたま大事にいたっていないだけかもしれません。
本書は、鍼灸の現場で遭遇しやすいインシデントとその防止法について、楽しいマンガと、エビデンスに基づいた解説で分かりやすく説明。「鍼の抜き忘れ」「火傷」「温灸による熱傷」など臨床現場で昔からあるインシデントから、「個人情報の保護」「カルテの記載と開示請求」「電動ベッドの事故」などを完全網羅しました。
さらに増補改訂につき、月刊「医道の日本」2015年8月号に掲載した4話を新たに収録。そして、事故につながるリスクを事前に察知するための「危険予知トレーニング(KYT)」で、マンガで得た知識を臨床の現場にフィードバックすることができます。
本書は、鍼灸の現場で遭遇しやすいインシデントとその防止法について、楽しいマンガと、エビデンスに基づいた解説で分かりやすく説明。「鍼の抜き忘れ」「火傷」「温灸による熱傷」など臨床現場で昔からあるインシデントから、「個人情報の保護」「カルテの記載と開示請求」「電動ベッドの事故」などを完全網羅しました。
さらに増補改訂につき、月刊「医道の日本」2015年8月号に掲載した4話を新たに収録。そして、事故につながるリスクを事前に察知するための「危険予知トレーニング(KYT)」で、マンガで得た知識を臨床の現場にフィードバックすることができます。
978-4-7529-1155-5 | |
監修・解説 | 山下仁 |
画 | 犬養ヒロ |
仕様 | A5判 207頁 |
発行年月 | 2017/7/31 | 価格 | 1,980円(税込) |
目次
●鍼の抜き忘れ/火傷/理学検査による傷害/深刺し/気分不良/手洗い/折鍼防止/B型肝炎対策/古い感染対策情報/抜鍼困難/温灸による熱傷/埋没鍼/個人情報の管理/皮下出血/子供の監視/施術後の疲労感と眠気/認知障害・失見当職の患者/カルテの記載と開示請求/東洋医学用語の誤解/中の刺鍼/患肢の取り違え、など28項目
●番外編楳田川青年の事件簿/番外編手指の衛生管理と適切な消毒法/番外編インシデント報告システム
●資料集、索引
●付録1 危険予知トレーニング(KYT)
●付録2 学生 江崎直人
●番外編楳田川青年の事件簿/番外編手指の衛生管理と適切な消毒法/番外編インシデント報告システム
●資料集、索引
●付録1 危険予知トレーニング(KYT)
●付録2 学生 江崎直人
ページサンプル
著者インタビュー
2012年10月に「マンガ 鍼灸臨床イシンデント」が発刊されました。月刊「医道の日本」で2年間連載したものに、書き下ろしストーリーが3本加えられ、資料集や索引も加えた本書。転ばぬ先の杖として、開業鍼灸師の方々にはぜひ読んでいただきたい1冊ですが、その読みどころや制作秘話について、監修・解説者の山下仁先生とマンガ家の犬養ヒロさんにお話していただきました。
(対談は、増補改訂版前の初版発刊時のものです)
――月刊「医道の日本」で2年間、連載されていた「マンガ 鍼灸臨床イシンデント」がこのたび単行本にまとめられました。鍼灸の安全性という固いテーマをあえてマンガという形で表現することになった経緯について、お話ください。
山下かつて「医道の日本」で連載されていた安全性のマンガを私自身が学生の頃に読んで、すごく印象的だったんです。どうしても安全性のテーマで語ると、事故の話などどちらかというと暗くて固い内容になってしまいます。でも、それだと、読書に慣れている人で、もともと安全性に関心が高い人にしか届けられないんですね。それで、教科書を読まない学生の記憶にも残るようなマンガで、しかも正確で最新情報を含んだ鍼灸臨床インシデントのマンガ企画はいつかやりたいなと思っていたんです。
そんなときに「医道の日本」(2007年2月号)の卒業生企画で「卒業した学生が現場で困らないように、安全性についてのマンガの監修をお願いできないですか」という提案を受けたんです。学生向けならば、まさにマンガはうってつけだなと思って、依頼を受けました。そのときは、これ1回で終わる予定だったのですが、2010年1月号から連載になって、さらに今回、書き下ろしも加えて1冊の単行本になった、というのが経緯です。
ただ、マンガにするにあたって、シリアスな劇画系の絵にはしたくなかったんですよ。ちょっとはじけたギャグ系で、楽しく安全性の知識が身につくのがいいなと思って、編集部から送られてきたいくつかのマンガ家さんの絵を見て、犬養さんに依頼してもらったんです。
そんなときに「医道の日本」(2007年2月号)の卒業生企画で「卒業した学生が現場で困らないように、安全性についてのマンガの監修をお願いできないですか」という提案を受けたんです。学生向けならば、まさにマンガはうってつけだなと思って、依頼を受けました。そのときは、これ1回で終わる予定だったのですが、2010年1月号から連載になって、さらに今回、書き下ろしも加えて1冊の単行本になった、というのが経緯です。
ただ、マンガにするにあたって、シリアスな劇画系の絵にはしたくなかったんですよ。ちょっとはじけたギャグ系で、楽しく安全性の知識が身につくのがいいなと思って、編集部から送られてきたいくつかのマンガ家さんの絵を見て、犬養さんに依頼してもらったんです。
犬養そうだったんですか! 選ばれていたとは知りませんでした。こんな歴史のある雑誌にいいのかなとずっと思いながら描いてきましたが(笑)、光栄です。
まさか監修の先生がストーリーのオチまで考えられているとは思っていなかったですが、最後のあたりで、実は先生が作られていたのだと気付きました。
まさか監修の先生がストーリーのオチまで考えられているとは思っていなかったですが、最後のあたりで、実は先生が作られていたのだと気付きました。
漫画家の犬養ヒロさん。小さい頃に小児鍼を受けたこともあるとか
山下このマンガでは、怒られ役の新米鍼灸師・江崎直人君が出てくるのですが、何かミスをしては、楳田川院長に怒られるんですよね。毎回、最後が「バカもん!」じゃ面白くないので、なるべくオチに変化が出るように工夫しました。普段は大学で教鞭をとりながら、臨床や研究をしているのですが、まさかオチを考える仕事をするとは思いませんでしたね(笑)。
――まだ読んだことのない読者もたくさんいると思います。本のなかで、どんなトピックスが取り上げられているのかを知ってもらうためにも、印象に残った話などがありましたら、教えてください。
山下この本では、「鍼の抜き忘れ」「火傷」「温灸による熱傷」など臨床現場で昔からあるインシデントから、「個人情報の保護」「カルテの記載と開示請求」「電動ベッドの事故」など最近のトピックスまで、28項目のインシデントが紹介されています。
どれも大切な知識ですが、ストーリーとして印象に残っているのは、第19回「東洋医学の用語の誤解」ですね。これは、江崎君が患者さんに「腎虚」について説明したところ、それが誤解されてしまい、トラブルになるという話です。
東洋医学用語と西洋医学用語の違いについては、説明の際に臨床家がきちんと意識しておく必要があります。患者さんはごっちゃになってしまいますからね。
また代替療法のなかには、患者さんの不安をあおって購入を勧めるような健康ビジネスも残念ながらあるようです。医療である鍼灸は、そういったビジネスとは一線を画さなければならない、そんな戒めもこの回には込められているので、解説も含めて、力を入れた一つです。
どれも大切な知識ですが、ストーリーとして印象に残っているのは、第19回「東洋医学の用語の誤解」ですね。これは、江崎君が患者さんに「腎虚」について説明したところ、それが誤解されてしまい、トラブルになるという話です。
東洋医学用語と西洋医学用語の違いについては、説明の際に臨床家がきちんと意識しておく必要があります。患者さんはごっちゃになってしまいますからね。
また代替療法のなかには、患者さんの不安をあおって購入を勧めるような健康ビジネスも残念ながらあるようです。医療である鍼灸は、そういったビジネスとは一線を画さなければならない、そんな戒めもこの回には込められているので、解説も含めて、力を入れた一つです。
犬養私は江崎君のライバルの池目君が好きですね。初めは単にキザで嫌な奴なんですが、段々と良いキャラになってきて、単行本用に書き下ろした「番外編②手指の衛生管理」の話でも活躍してもらいました(笑)。
山下ストーリーについては、編集部から時々「そろそろライバルを出してください」「次は恋愛要素をいれてください」というふうにミッションが与えられるんですよ。言われたときは「そんなこと言われても……」と戸惑うんですけど、それでも考えているうちに、よい物語が浮かんできてストーリーが広がっていくんですよね。池目君もそんな編集部ミッションで生まれたキャラの1人です(笑)。
監修・解説を担当した山下仁先生。ストーリーのアイディアは実際にあった事例から
犬養私、この「手指の衛生管理」を読んで、結構びっくりしたんです。鍼灸業界では、こんなに衛生管理について意識されているんですね。第8回では「B型感染対策」の回もありますが、衛生や感染対策にここまで気を配っているとは全く知りませんでした。
山下鍼灸を受けたいなと思っている人で、感染問題を心配して受けていない人はいると思います。だから、すべての鍼灸院でこのような対策が浸透することが大切だと思っています。
あと池目君は「電動ベッド」の回でひどい目に遭っていますが、これも実際に起きうる事故の1つです。卒後研修鍼灸師には、電動ベッドとワゴンを必ず離して使うように指導しています。マンガの中では池目君のリアクションが笑えるけど、現実に発生してしまったら悲惨な事故になりかねないんですよ。
あと池目君は「電動ベッド」の回でひどい目に遭っていますが、これも実際に起きうる事故の1つです。卒後研修鍼灸師には、電動ベッドとワゴンを必ず離して使うように指導しています。マンガの中では池目君のリアクションが笑えるけど、現実に発生してしまったら悲惨な事故になりかねないんですよ。
犬養実際にそうして失敗してしまう前に、マンガで体験できるというのは、この本のよいところですよね。
山下特にマンガだと映像として頭に残るんです。患者さんの電動ベッドを上げるときに、ふと頭によぎってもらうだけで、事故は防げます。「待てよ、これでいいのかな」と立ち止まってくれるといいなと思います。
あと、これも単行本の描き下ろしですが、「番外編③インシデント報告システム」では、実際に治療院でどういう取り組みをするべきかを書きました。インシデントレポートを集積して原因分析・フィードバックを繰り返していくことが大切なのですが、医療事故が起きるとしばしば犯人探しになって、「とんでもない奴だ」とか、「同業者の恥だ」などと処分して、ケジメをつけたつもりになりがちです。しかし責任追及よりも、なぜ事故が起きてしまったのか、きちんと根本原因分析を行って、教育と現場にフィードバックさせることが重要なのです。
あと、これも単行本の描き下ろしですが、「番外編③インシデント報告システム」では、実際に治療院でどういう取り組みをするべきかを書きました。インシデントレポートを集積して原因分析・フィードバックを繰り返していくことが大切なのですが、医療事故が起きるとしばしば犯人探しになって、「とんでもない奴だ」とか、「同業者の恥だ」などと処分して、ケジメをつけたつもりになりがちです。しかし責任追及よりも、なぜ事故が起きてしまったのか、きちんと根本原因分析を行って、教育と現場にフィードバックさせることが重要なのです。
すらすらと江崎君を描くを犬養さん
――本書を読むことで、読者が得られるものについて教えてください。
山下このマンガと解説も読んだら、現在の鍼灸界で言われている安全性に関する知識はほぼすべて分かります。これまで私が論文や講演で述べてきたこと、経験したり聞いたりした事故やヒヤリ・ハットの例、授業のために調べたことなど、ほとんど出し尽くしました。結構、新しい海外の論文も紹介していますから、この1冊を繰り返し読めば、鍼灸臨床のインシデントのエキスパートになれる・・・かもしれません。時間のない人は、解説部のポイントの項目だけチェックしても、事故防止につながると思います。
「まえがき」にも書いたのですが、インシデントについては、ベテランの先生におごりがあると判断せざるを得ないデータがあります。「自分はこれだけ長くやっていて何も起こっていないのだから」と。でも実際統計を見てみると、そういう人達が、20年目にして初めて「こんなことが起こってしまった!」というケースがたくさんあるんです。だから安全性の知識は、治療技術うんぬん以前の問題として、とても大切なものなのです。
「まえがき」にも書いたのですが、インシデントについては、ベテランの先生におごりがあると判断せざるを得ないデータがあります。「自分はこれだけ長くやっていて何も起こっていないのだから」と。でも実際統計を見てみると、そういう人達が、20年目にして初めて「こんなことが起こってしまった!」というケースがたくさんあるんです。だから安全性の知識は、治療技術うんぬん以前の問題として、とても大切なものなのです。
――最後に一言ずつお願いします。
犬養今まで鍼灸に全くなじみがなかったので、絵を描くのに、最初は苦労しました。でもすぐに、鍼を刺す手のさばきなどを書くのがとても楽しくなりました。こうして1冊になって感激です! できるだけ多くの人に、江崎君の奮闘ストーリーを読んでほしいですね。
山下連載当時は東京の学校で教えていたんですが、講義の合間に喫茶店で待ち合わせて、編集者と一緒に唸りながら、ストーリーを考えたのを懐かしく思い出します。授業が終わった直後だから、体も頭もヘロヘロなんですけど、クリエイティブな話し合いが楽しくて、全然苦じゃなかったです。
打ち合わせのとき以外にも普段から、取り上げるネタや、どんなオチにするかを思いついたら、すぐにアイフォンにメモしていました(笑)。読者のみなさんにも、きっと楽しんで読んでもらえると思います。
鍼灸の現場で起きうるリスクを十分に知ることで、多くの事故を防止できるだけでなく、不幸にして何か偶発的なことが起きても落ち着いて適切な行動をとることができると思っています。鍼灸師、鍼灸マッサージ師のみなさまに役立ててもらえれば幸いです。
打ち合わせのとき以外にも普段から、取り上げるネタや、どんなオチにするかを思いついたら、すぐにアイフォンにメモしていました(笑)。読者のみなさんにも、きっと楽しんで読んでもらえると思います。
鍼灸の現場で起きうるリスクを十分に知ることで、多くの事故を防止できるだけでなく、不幸にして何か偶発的なことが起きても落ち着いて適切な行動をとることができると思っています。鍼灸師、鍼灸マッサージ師のみなさまに役立ててもらえれば幸いです。
●山下仁(やました・ひとし)
愛媛県生まれ。1987年、明治鍼灸大学鍼灸学部卒業、鍼灸師。愛媛県立中央病院東洋医学研究所技師、筑波技術短期大学(現:筑波技術大学)助手、英国エクセター大学補完医学研究室客員研究員、東京大学医学部家族看護学教室客員研究員などを経て2007年より森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科教授・学科長。2011年より大学院保健医療学研究科長兼任。博士(保健学)(2002年、東京大学)。主な著書として『鍼治療の科学的根拠』(共訳, 医道の日本社)、『現代鍼灸臨床試論』(桜雲会出版部)など。専門は鍼灸安全学、統合医療鍼灸論。
●犬養 ヒロ(いぬかい・ひろ)
大阪府生まれ。現在、犬、猫2、カラス、金魚と暮らす、動物中毒の漫画家。動物飼養管理士、動物病院AHT勤務経験有。
愛媛県生まれ。1987年、明治鍼灸大学鍼灸学部卒業、鍼灸師。愛媛県立中央病院東洋医学研究所技師、筑波技術短期大学(現:筑波技術大学)助手、英国エクセター大学補完医学研究室客員研究員、東京大学医学部家族看護学教室客員研究員などを経て2007年より森ノ宮医療大学保健医療学部鍼灸学科教授・学科長。2011年より大学院保健医療学研究科長兼任。博士(保健学)(2002年、東京大学)。主な著書として『鍼治療の科学的根拠』(共訳, 医道の日本社)、『現代鍼灸臨床試論』(桜雲会出版部)など。専門は鍼灸安全学、統合医療鍼灸論。
●犬養 ヒロ(いぬかい・ひろ)
大阪府生まれ。現在、犬、猫2、カラス、金魚と暮らす、動物中毒の漫画家。動物飼養管理士、動物病院AHT勤務経験有。