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もっと知りたい!積聚治療について、小林詔司先生にインタビューしました!

公開日:2022年6月17日

積聚(しゃくじゅ)治療の理論を築き、多くの治療家を導いてきた小林詔司先生が執筆・監修出演した弊社書籍とDVDはロングセラーとなっています。

鍼灸は、症状の改善だけでなく未病治療としてもますます注目されるようになってきた中で、「あらゆる症状は生命力の低下によって生じている」とする積聚治療について、

積聚治療のことをもっと知りたい

施術に取り入れたい

と考える治療家の先生方の声にお応えして、このたび、小林詔司先生に改めて教えていただきました!

積聚治療の特徴

病の原因を「生命力の低下」として把握する
頭痛、肩の可動域不全、下腹部の冷えなど違う症状だとしても、原因は同じ「生命力の低下」と考えます。

あらゆる症状は生命力の低下によって生じているので、全てを「指標」と捉える
主訴、症状、脈の状態、積聚などを全て「指標」として捉えます。

治療とは生命力の低下を回復させること
症状は違っても、生命力の低下を回復させるという治療の目的は変わりません。

積聚治療=基本治療+補助治療
(積聚会HPより http://shakuju.com/acupuncturist/therapy

小林詔司先生のご紹介

1942年、東京都生まれ。1965年、上智大学経済学部卒業。1969年、東洋鍼灸専門学校卒業。1972年、東京教育大学教育学部理療科教員養成施設(現・筑波大学理療科教員養成施設)を卒業し、同年に太子堂鍼灸院を開業されました。

1976年、関東鍼灸専門学校の講師に就任し、実技指導の中で積聚治療を確立。関東鍼灸専門学校名誉講師。積聚会名誉会長。アメリカからも継続してセミナー講師として招かれるなど、国内外でご活躍されています。

ボストンでの積聚治療セミナー

小林詔司先生にズバリ質問させていただきました!

――積聚治療とは?ポイントを教えていただけますでしょうか?

POINT1 病症の位置づけ
人体は、目に見えない生命力(精気)が形を得て見えるようになったものと考えます。

その生命力が充実していれば形は安定しているととらえると、生命力が弱ると形が不安定になり、それを症状とみなすことができます。その状態を積聚治療では病症と位置づけています。

すなわち、身体にいろいろな症状が出るのは、原則としてその部位の異状だけを表わすのではなく、生命力の弱りを示している、としています。

例えば、「雲が出れば天気が崩れる」という現象は、「雲の部位が悪いのではなく、雲は気圧の下がることを示している」と見るようにです。

POINT2  生命力の判断と指標
あらゆる症状は生命力の低下によって生じている、とするので、まず腹部、次に脈、そして症状から生命力の状態を判断します。主訴や症状も、直接の治療対象でなく、腹部や脈と同様、生命力の弱りの程度を示す指標とします。

POINT3 治療
治療とは、弱った生命力を元に戻すこととして、それが元に戻り充実すれば症状は治まるとしています。治療は、どの患者にも施す基本治療と、それに加える補助治療で構成されます。

基本治療は次の手順とし、どの患者にも施す共通の治療過程です。
①腹部接触鍼 ②脈調整 ③腹診 ④背部接触鍼 ⑤背部の膀胱経2行線の兪穴治療

POINT4 治療の経過
生命力の賦活の状況は、治療に応じて変化する指標で判断します。

積聚治療について、具体的に教えてください!
――初診の患者さんへの問診で気をつけていることはございますか?

小林 ほかの治療法でもそうだと思いますが、どの患者さんにもまず次のことを確認しています。ただ、必ず、生命力の弱くなった原因の特定に結びつくものがないか、というとらえ方で問診します。
1. 質問は最小限にして、できるだけ話を聞き出す。
2. これまでの医療機関で受けた受療内容を確認する。
3. 事故など外傷の有無を確認する(必須)。
4. 日常生活、親族の状況を確認する。

――小林先生が脈診、腹診の際に気をつけていることを教えてください。

小林 次の4つです。
1. 患者に不快感を与えないこと。
2. 診断に長い時間をかけないこと。
3. 全身との関係に注意すること。
4. 常に変化を探ること。

――鍼とお灸はどのように使い分けていらっしゃいますか?

小林 積聚治療では、鍼は身体に熱を起こす手段、灸は熱を与える手段と考えています。そのため、治療は鍼が主であり、灸を従としています。

ハワイでの積聚治療セミナー

例えば、外科的症状があり、患部を直接治療して欲しい患者さんへの対応について教えてください。

――鍼灸師は外科的症状の原因を全身のつながりからくるものだとイメージできますが、患部を直接触って欲しい患者さんも多いので、主訴や症状を指標ととらえてすぐに局所を刺鍼しないとなると、患者さんへの説明が難しいのではないかと思われます。

小林先生は、患部を直接治療して欲しい患者さんへの説明で気をつけていることはございますか?

例えば、変形性膝関節症の患者さんへの治療の際、腹診や背部を治療する際、どのような説明をされていらっしゃいますか?

小林 先に述べたように、患部に触れることは治療でなく、指標の状況の確認のために行っています。変形性膝関節症の変形性は老人性とされていますが、基本的には生命力の弱りによる変形とします。

人にはいろいろな顔があるように、身体の全組織も個性的でいろいろあります。だから生命力が弱って現れる症状も、身体の右に出たり上に出たり、手に出たり足に出たりと個性的であると説明します。

膝関節症の発症部位は、外傷でない限りその人の発症しやすい個性的な部位といえます。その背景には次に触れる冷えが関係します。

――変形性膝関節症の背景に冷えが関係することについて詳しく教えてください!

小林 まず、積聚治療における冷えについてですが、冷えという言葉は、一般的には、温度的な表現なので誤解を招きやすいですね。反対の概念は熱ですが、積聚治療では生命力を熱としています。それが弱くなった状態やそれを弱くするものが冷えなのです。

身体は生命力である熱を一定の状態に保つように調整しながら生きていますが、調整する力が弱くなった状態を冷えととらえます。

冷えの状態とは、温度的な冷たい感覚はもちろんですが、積聚治療では、例えば、動きが鈍い・遅い、皮膚や筋肉が弱い・柔らかい、色が白や青の寒色系、組織が凹む・痺れるなど、活動的でない状態をいいます。

痛みは熱性のことが多いですが、上記のような状態で感じる痛みは冷えと考えます。

――冷えに傾向はあるとお考えですか?

小林 冷えは一般に下肢や体内の組織から始まる傾向にあります。

そして、身体は冷えると、往々にして、熱が体表面や粘膜、体上部に出てくると考えます。典型的なのは発熱です。これは温度的なものですが、発熱以外にも、赤味がかった皮膚、盛り上がった皮膚、痛みや痒みのある皮膚、感覚の鋭い皮膚、速い動作、逆上せなど、過ぎた活動状況から出てきます。

――小林先生が考える変形性膝関節症における冷えはどのようなものですか?

小林 変形性膝関節症に当てはめれば、冷えとする症状は、浮腫み、動作痛、圧痛、動作障害、そして熱感や変形などです。しかし冷えの傾向や具体的な一つ一つの症状にこだわることよりも、冷えか熱のどちらかで判断するのが実際的と思っています。

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――幼児や、子供の治療も同じように冷えを考えて治療をしてもよろしいでしょうか?

小林 幼児や子供も、大人と同じように判断します。どのような障害であっても、例えそれが熱性であっても、先ずそれは冷えによるものであり、冷えをもたらす原因が必ずある、と考えます。

熱症状も背景に生命力の弱りという冷えがあるとします。

――積聚治療で効果を出しやすい疾患、難しい疾患、または体質などはございますか?

小林 治療は、冷えが生じてから時間が経てば経つほどその影響は広範囲、全身に及ぶものなので、治療開始は早いほどベターです。

治療が難しいかどうかは病名によることではなく、患者の生活習慣や人間性に依ることがほとんどです。典型的なこととしては、好きなことのやり過ぎや食べ物の摂り過ぎなどです。

そのように患者さんに説明をすると、患者さん自身も納得される場合が多いのではないでしょうか。体質についても同様で、鍼灸治療を受ける患者さんの姿勢如何と考えます。

――小林先生は基本的な積聚治療の他に、患部や局所に鍼をされることはございますか?

小林 基本治療以外の治療は、すべて補助治療です。補助治療で患部や局所に鍼を刺すことはあります。患部や局所として最も使うのは外傷を受けた部位で、打撲などを強く受けた部位は必ず刺絡することにしています。

来院患者の90%は生後何らかの外傷を受けているようで、主訴の原因がそれに依ることもよく経験します。

――補助治療で患部や局所に治療をする際は、何を意識されていらっしゃいますか?

小林 患者が訴える症状は治療部位でなく指標なので、原則、外傷部以外には施術しません。基本治療にしろ補助治療にしろ、治療は、鍼を当てたツボから患部や全身に向けて意識を送ることがとても重要です。

この意識は生命力を賦活するためのもので、特に骨格を、時には内臓を透視します。その方法は、ツボに鍼を当て、そこから骨組織などに沿って解剖学的に組織を透視するだけです。

意識を送るとは、身体を透視すること。それを、指標の変化を診ながら、ある場所では1分、ある場所では5分と継続します。
このようにすると、指標(症状)にプラスの変化が現れることを多々経験することになるでしょう。

――最後になりますが、これから積聚治療を学びたい学生や治療家の方々へ、習得のコツなどアドバイスをお願いします。

小林 積聚治療では、使うツボは限定されていて非常に少なく、上に述べたように、治療は、術者の意識(透視)に重点がおかれます。

一般に意識は、心の動きや対象に対して本人が自覚する受動的な行為ですが、この治療では、骨組織などを透視することを意識すると表現するもので、能動的な意識行為です。付け加えれば、骨組織は生命力と非常に関係が深いとの認識からです。

それだけに、鍼灸師として、症状を取ることばかり考えているとなかなか技量の上達が望めません。成書(『積聚治療』)にあるように、鍼の刺入訓練から始まる一連の基礎訓練を飽きずに行うことが、結局、治療上達の早道です。

治すことを治療目的とせず、指標の変化を感じとれるようになることが大切です。病気は、治すものでなく治るようにすることです。

――この度は貴重なお時間を頂きましてありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。今回のインタビューでは、積聚治療のポイントから、小林詔司先生の多くの臨床経験を踏まえた、施術に関する貴重な回答をお伺いすることができました。海外でも取り入れられている積聚治療。次の機会には、ぜひさらにまた詳しく教えていただきたいと思っています!

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