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第71回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 東京大会開催レポート

公開日:2022年6月8日

2022年6月3日(金)~5日(日)の3日間、東京有明医療大学・有明ガーデンコンファレンスセンターにて、第71回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 東京大会が開催されました。

今回のテーマは『現代医療における鍼灸の役割―未来へ向けての鍼灸のチカラ―』

新型コロナウイルス感染症の影響により、現地開催は3年ぶり。待ちわびた対面での大会に、会場および個々人でも感染対策をしっかり行った上で、3日間を通じて大勢の参加者が来場されました。東京での開催は66回大会以来5年ぶりです。

弊社も、企画展示ブースへの出展と、事前に大会事務局に許可をいただき取材参加もさせていただきました!

今大会も、エビデンスに基づく貴重な講演、発表ばかりでしたが、開会式の後の会頭講演は、正に今大会のテーマの意義、現代医療における鍼灸の役割、鍼灸のチカラをより明らかにするためになすべきこと、未来に広がる鍼灸への期待を示すものでした。

大会会頭講演の紹介

大会会頭講演は、「現代医療における鍼灸の役割 -頸部神経根症を中心として-」坂井友実氏(東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 教授)でした。

第71回(公社)全日本鍼灸学会学術大会東京大会 大会会頭 坂井友実氏

司会の(公社)全日本鍼灸学会 会長 若山育郎氏(関西医療大学 名誉教授)から、「坂井先生は、一貫して身体の症状を現代医学の視点でとらえ、その病態を理解して治療する」とご紹介があったとおり、

坂井氏は、頸部神経根症に対する鍼治療実績を、鍼灸の領域にも使いやすい評価法の紹介から、Jackson head compression testにて上肢痛の再現が見られて、神経根症と診断されたものを集積症例とし、筋パルスから十分な安全を確保した上での神経パルスへの移行といった段階的な治療成績からの鍼治療の効果について、判定基準を挙げながら詳しく解説されました。

解説された症例効果をエビデンスとした上で、鍼治療の特徴として、病変局所にアプローチ可能であり、病態に応じた治療が可能な点などを説明し、現代医療の中に鍼灸を位置づけるためには、

「疾患や症状を現代医学的視点から病態把握し、評価を現代医学的視点で行い、有効性・有用性を科学的な視点で検証する必要がある」と述べられました。

鍼灸の研究は、エビデンスがまだまだ十分ではないため、現代医療の中で鍼灸を行っていくには、専門医とタイアップしていく必要があり、そのためには、疾患や病態の考え方や知識を身に付けておくことが求められてくることを踏まえて研究を進めていくことが必要であるとのこと。

鍼灸は、その特徴を生かすことで、現代医療の臨床各分野の治療手段の一つとして役割を果たしうる可能性があるとまとめられました。

なお、視聴者からの「閉塞性動脈硬化症(ASO)に対する鍼通電の効果は、毫鍼・円皮鍼・灸などに比べて格段の効果があるのでしょうか」との質問には、

治療の第一選択がパルスではなく、置鍼や円皮鍼などのマニュアル鍼での治療方法を用いて、症状が軽くなるかなどを確認し、それを行ってもあまり変化がないときに筋パルスを行い、それでも満足を得られないときに神経パルスの治療へと段階を踏みながら進めている、と回答されました。

長年、臨床で活躍されてきた演者からの解説は、すべての聴講者にとって、各々の知識として残り、今後の臨床に活かされることでしょう。

治療にあたっては、患者さんの意向や状況が重要とのアドバイスもありました。刺激を好まない患者さんもおり、また、患者さんの中には、1回の治療で治ると思う方も多いので、初診時に、治療の間隔についても十分説明することの必要性について語られた際には、多くの聴講者がうなずく反応がありました。

治療家としてこれまでに経験していることであっても、その内容が個人の経験だけに終わらず、改めて整理された解説を聞き、同じ場で他の治療家と共感できる機会は、日々の治療の振り返りや、臨床での新たな発見に繋がることもあるでしょう。

坂井氏が、医師が臨床に携わり一人前になっていく姿を実際に肌で感じ経験してきた、という話の中で語られた「医学生が、一人前になっていくと顔つきがかわってくる。顔つきの変わる鍼灸師を育成できれば」との深く暖かい言葉も、学生の方にも、鍼灸師の資格を取得したばかりの先生方にも、若手鍼灸師の方と多く接している先生方にも、それぞれの立場で深く心に残ったのではないでしょうか。

今大会での、エビデンスに基づいた鍼灸の多くの研究成果の発表が、これからの医療の臨床各分野における鍼灸の役割を明確にし、発展させていくであろうことも実感できる講演でした。

矢野忠氏(明治国際医療大学 学長)の基調講演 は、

「現在および未来の社会における鍼灸の役割―鍼灸の本当のチカラとは―」でした。

Society 5.0の新たな社会。最も成長する分野はヘルスケア産業であると指摘されている。医療は診断・治療から予防へ。主観的健康感を改善する力が鍼灸治療にはある。と大きなテーマからこれからの鍼灸の役割について学ぶことができました。

本大会は、いくつかの会場に分かれて、講演、シンポジウム、パネルディスカッション、一般口演、学生発表、公開講座、ワークショップ、企画展示ブースなどがあり、興味のある会場に、自由に参加する形式で開催されました。

鍼灸の未来を切り拓く研究・臨床の成果発表
115件の一般発表も!
演題「安全性・構造」発表
森ノ宮医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 尾崎朋文氏
ランチョンセミナーも満席でした!
弊誌「医道の日本」も資料として活用していただきました。

もし、興味があるプログラムの時間が重なり、他方を聞き逃してしまった場合でも、今回は、アーカイブ配信も行われているので、聴き逃しが減ることは、とても嬉しいことです。

本大会は、本日6月8日(水)正午~ 6月26日(日)24時まで、会期中にライブ配信したプログラムの録画が再配信されます。配信の期間中は、録画を自由に選んで視聴できるそうです!

※アーカイブ配信の期間が、7月10日(日)24時まで延長されました!(第71回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 東京大会 運営事務局発表 2022.6.18)

アーカイブ配信視聴の参加登録はこちらから ※アーカイブ配信の期間が、7月10日(日)24時まで延長されました!
http://tokyo71-jsam.umin.jp/participant/index.html

パネルディスカッション3
「高齢者医療を支える鍼灸師の役割」寺澤佳洋氏(口之津病院 内科・総合診療科)からは「鍼灸師は最強!」との解説もありました。
教育講演2「鍼灸臨床に必要なうつ病の基礎知識」中村元昭氏(昭和大学 発達障害医療研究所 副所長 准教授)
メンタルヘルスの領域でも鍼灸への期待は高まっています。中村元昭氏の講演は中継会場まで満席でした。
教育講演3「周産期メンタルヘルスの基礎知識」での司会 形井秀一氏
(つくば国際鍼灸研究所 所長)

今大会は、参加者が自分の状況に合わせて参加手段を選ぶことができる、ハイブリッド形式で行われました。IT技術の発展のおかげでもあります。withコロナの生活様式が浸透し始めていますが、様々な専門分野で、これから何をなすべきかを、先行して検討し技術革新することが、人々の生活を進化させていくのだと改めて感じました。IT技術者の方々にも感謝をした大会であり、医療の未来を担う鍼灸の可能性も確信できる大会でした。

なお、全国から治療家が集う貴重な機会であることから、懇親会の開催を望む声も多く聞こえました。次回大会までに、新型コロナウイルスの感染も収まり、リアルな情報や意見交換の場となる懇親会が開催されることを祈っております!

今大会では12件の学生発表がありました。これからの鍼灸の担う学生の皆様のますますのご活躍をお祈り申し上げます。
鍼灸の有効性を示す臨床上のエビデンスが多く発表された素晴らしい大会でした。聴講を逃してしまった方はアーカイブ配信で!

企画展示の弊社ブースにお立ち寄りいただきました皆様ありがとうございました。

企画展示会場の様子

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