第75回(公社)全日本鍼灸学会学術大会岡山大会レポート

第75回(公社)全日本鍼灸学会学術大会岡山大会が、2026年5月30、31日の2日間にわたり、岡山コンベンションセンター(ママカリフォーラム)にて開催され、全国から1605人の参加者が集まった。今大会のテーマには「患者によりそう医療 ―医師と鍼灸師のコラボレーション―」が掲げられ、鍼灸師と医師の連携を通じた、より良い医療の実現を目指す大会として企画された。本学会会長の若山育郎氏を筆頭に、大会会頭は大塚文男氏、実行委員長は山口大輔氏が務めた。
開会式では、若山氏より、今大会のテーマ「患者によりそう医療―医師と鍼灸師のコラボレーション―」に関連し、今後の鍼灸師には医療関係者との連携がより重要になるとの考えが示された。続いて、大塚氏は、医師と鍼灸師が相互理解を深め協働することの重要性を示し、山口氏からは、本大会が医師との連携や新たなつながりを生む契機となることへの期待が述べられた。

大会会頭講演、大会副会頭講演
大会会頭講演「コロナ後遺症の診療と課題 総合診療医としての対応と鍼灸への期待」と題して、大塚文男氏(岡山大学学術研究院医歯薬学域総合内科学)が登壇。総合診療医の役割およびコロナ後遺症診療の現状についての報告から総合内科では頭痛、倦怠感、発熱、胸痛、浮腫など多様な症状を訴える患者が受診し、必要に応じて各専門科と連携しながら診療を行う重要性を示した。また、西洋医学のみでは対応が困難な症例も存在し、その際には漢方医学的アプローチの併用が有用となる場合があると示唆。コロナ後遺症については、感染後に持続する倦怠感、頭痛、睡眠障害、呼吸困難感、ブレインフォグなど多彩な症状を呈し、免疫異常や自律神経障害など複数の要因関与が想定されるものの、病態解明は十分ではないと展開した。特効薬が存在しない現状では、症状に応じた対症療法に加え、漢方、リハビリテーション、心理社会的支援を組み合わせた包括的な対応が求められるとし、これまでの診療経験を踏まえ、多職種連携、医師と鍼灸師の連携への期待を示した。総括として、総合内科には多様な患者が受診することから専門科との連携が不可欠であること、EBMの重要性とその限界、さらに症例によっては補完的医療アプローチが有用となることを伝えた。

大会副会頭講演「総合内科診療に漢方を活かす」と題して、植田圭吾氏(岡山大学学術研究院医歯薬学域岡山県南東部〈玉野〉総合診療医学講座)が講演した。総合内科では多様な症状を訴える患者を診療する機会が多く、西洋医学的な検査や治療のみでは十分な対応が困難なケースも存在すると説明。そのような場面で漢方医学を取り入れることで、症状の改善につながる例を数多く経験していると述べた。また近年は漢方薬に関するエビデンスの蓄積が進み、西洋医学の診療ガイドラインにも掲載されるなど、漢方医学と西洋医学の連携が広がりつつある現状を紹介。一方で、虚や寒といった漢方医学独自の概念は、西洋医学では捉えにくい患者の病態把握に有用であり、さまざまな愁訴への対応に役立つとした。さらに、がん治療や救急処置が必要な状態、外科的・内科的処置を要する病態、うつ病など精神科的介入が必要な状態、生活習慣病の治療などは漢方が第一選択にはならないことを示し、適切な西洋医学的治療を前提としたうえで漢方医学を活用する考え方を解説した。

基調講演
基調講演1「総合診療科医のニーズと課題、鍼灸との関係を含めて ―患者中心の医療と連携、そして臨床研究へ―」で講演した徳増一樹氏(岡山大学病院総合内科総合診療科)。近年、総合診療科は臓器にとらわれず患者全体を診る領域として重要性が高まり、患者中心の医療がその基盤に位置づけられる中で、本講演では総合診療と鍼灸の双方向連携をテーマとして、医療機関から鍼灸への紹介における適応判断を具体的に提示した。一方、鍼灸側から医療機関への連携については、重篤疾患の見逃しを防ぐ評価視点や情報共有の重要性を指摘。さらに、受診に至らない患者の初期受け皿として鍼灸院が機能し得る点が示され、地域医療における橋渡し役としての意義が強調された。また、こうした連携を臨床研究へ展開し、未分化症状や慢性疲労などへのアプローチを体系化する必要性にも触れた。

基調講演2「総合診療の歴史と今後の展望 ~日本版ホスピタリスト『病院総合診療専門医』への期待~」にて、田妻進氏(日本病院総合診療医学会理事長/地方独立行政法人広島県立病院機構県立二葉の里病院顧問・名誉院長)が講演を行った。田妻氏は、はじめに日本における総合診療の発展した歴史を振り返り、病院を基盤とした総合診療医育成の現状について共有した。続けて、医師不足や専門医偏在によって病院医療の維持が課題となる中、日本病院総合診療医学会(JSHGM)が推進する日本版ホスピタリスト「病院総合診療専門医(FHGM)」制度について、2021年に制度が開始され、2025年には100名の専門医が誕生したことに触れつつ、全人的医療や地域包括ケア、マネジメント、教育などを担う病院総合診療医の役割の大きさを述べた。また、米国のHospital Medicineの発展にも言及しながら、今後の日本の医療体制における病院総合診療医への期待を示した。

特別講演
特別講演1「千年の眠りから、目覚めよ、医心方 ~ユネスコ世界遺産登録を目指して~」を担当した山岡傳一郎氏(松山記念病院/愛媛県立中央病院)。『医心方』は984年に丹波康頼が編纂した日本最古の医学書で、鍼灸を含む幅広い医学知を体系化した大著であり、特に経穴と主治症の整理が中核となる原典として紹介された。また、同書は近年再評価が進み、医学倫理や養生思想の普遍性が注目されていることに着目し、さらに愛媛県立中央病院では経穴主治症を基に「明堂経」の復元研究が進められ、古典と現代臨床の照合によりその体系性が再検証されていることを報告。『医心方』は現代医療にも応用可能な医学書であるとまとめた。

特別講演2「治すから治る身体を作るにシフトする ~慢性疼痛治療から見えてきた鍼灸の形~」にて、伊藤和憲氏(明治国際医療大学鍼灸学部長・教授)が講演を行った。伊藤氏は冒頭、健康・医療の目的が「寿命の延伸」から「健康寿命の延伸」、さらに「well-being(幸福)」へと変化していることを示し、それに伴い鍼灸にも治療だけでなく予防や地域とのつながりを支える役割が求められていると述べた。本講演では、こうした視点を踏まえ、慢性疼痛に対する鍼灸治療の現状と今後の鍼灸師に求められる役割について解説された。伊藤氏は、慢性疼痛に対する鍼灸治療はガイドラインでも推奨されている一方、難治化した症例では前頭前野や扁桃体、脊髄など中枢神経系の機能変化が関与していることに注目した。また、ストレスや食習慣、孤独感といった生活因子が症状の慢性化に影響することから、鍼灸技術だけでなく「治る身体を作る」視点が求められると呼びかけた。さらに、東洋医学における「養生」の考え方を基盤に、地域コミュニティやICT連携を活用した「社会的処方」の取り組みを紹介し、鍼灸が人々の健康と幸福を支える地域資源として機能していく可能性を示した。また今後は、鍼灸の効果や生活習慣、社会的つながりに関するデータをどのように収集・管理し、社会へ還元していくかが重要な課題になると述べた。

教育講演
教育講演1「鍼灸治療のエビデンス~国内における歴史・現状・課題~」では、山下仁氏(森ノ宮医療大学副学長)が登壇し、国内における鍼灸治療の臨床的エビデンス、とくにRCT(ランダム化比較試験)の歴史的変遷と今後の課題について解説した。日本の鍼灸RCTは1960年代に開業鍼灸師らによって先駆的に実施され、1970年代に研究が進展したものの、その後一時停滞した。しかし1990年代後半以降、EBMの普及やWHO/WPROによる研究ガイドライン整備、学会活動や若手研究者の取り組みなどを背景に再び活発化し、2000年以降は研究数が大きく増加した。2024年時点では国内19件の診療ガイドラインに鍼灸の推奨度に関する記載がみられるまでになっている。一方で、診療ガイドラインの記載を鵜呑みにせず、その信頼性を継続的に検証する必要性も指摘された。また、どの鍼灸治療法がより有効かを具体的に示すガイドラインは依然として不足しているという。さらに、治療の異質性や経穴特異性の検証、適切な対照群設定や盲検化、プラセボ効果への対応など、研究方法論上の課題も多く残されている。講演の最後には、これまで蓄積されてきたエビデンスや診療ガイドラインの意義を専門家だけで共有するのではなく、社会に向けて分かりやすく発信していくことの重要性が強調された。

教育講演2「パーキンソン病の最新治療 ~外科治療から細胞治療、鍼灸、リハビリまで~」では、佐々木達也氏(岡山大学病院脳神経外科講師)が演台に立った。まずジストニアの症例をスライドに映し、パーキンソン病治療との関連性について解説。パーキンソン病の治療は時代とともに大きく変化していることを紹介したうえで、鍼灸を含めた包括的な治療について述べた。パーキンソン病が中脳黒質ドパミン神経細胞の脱落変性によって生じる神経変性疾患であり、超高齢社会を背景に患者数が増加傾向にある神経難病であること、さらに、症状を運動症状と非運動症状に分類して整理する重要性を示し、安静時振戦、無動、筋固縮、姿勢保持障害の4大運動症状に加え、自律神経障害や認知機能障害など多彩な非運動症状を取り上げた。薬物治療に伴う日内変動やジスキネジアにも触れ、病態の複雑さを紹介した。治療面では、初期には薬物療法が有効である一方、進行期には薬物療法のみでは十分な効果が得られない場合があるとし、そのため脳深部刺激療法(DBS)や持続ドパミン製剤の皮下投与といったデバイス補助療法が重要な選択肢になるとした。また、薬物治療やデバイス治療は主に運動症状に対して効果を発揮する一方で、非運動症状が強い患者や薬物治療を拒否する患者も少なくないことを指摘。加えて、将来的な治療として細胞移植治療の展望についても言及し、今後は治療選択肢のさらなる拡大に期待を込めた。最後に、診療を円滑に進めるためには患者一人ひとりの性格や価値観を把握し、その患者にとって最も困っている主症状の主観的な改善を得ることが診療のポイントであるとまとめ、治療効果の評価には患者視点を重視する姿勢の大切さを訴えた。

教育講演3「頭痛の病態と診断・治療 最近の進歩」では、竹島多賀夫氏(一般社団法人日本頭痛学会理事長)が担当した。本講演では、頭痛疾患の病態理解の深化と診断技術の進展について語り、特に片頭痛におけるCGRP関連機序など分子レベルでの知見の蓄積により、従来よりも精緻な病態把握が可能となっている点が示された。また、臨床現場では画像診断や診断基準の洗練により鑑別の精度が向上しているとして、治療に関してはCGRP関連抗体薬や新規経口薬の登場により選択肢が拡大し、治療戦略は従来の対症療法中心から予防を含めた個別化へと移行しつつあることが述べられた。

シンポジウム
シンポジウム1「総合診療と地域の鍼灸院との連携」では、はじめに、増田卓也氏(三井記念病院総合内科・膠原病リウマチ内科)が「総合診療と地域の鍼灸院との連携:新たなる多職種連携の模索」と題して講演を行った。増田氏は、総合診療医と地域鍼灸院の連携が地域医療の質向上に重要である一方、鍼灸院に関する情報不足が連携の障壁となってきたと指摘。そこで、総合診療科において鍼灸治療の適応が期待される患者を選定し、オンラインを活用した患者紹介システムによる連携を推進してきた過去を紹介。連携開始から2年が経過し、認定鍼灸師の目安が可視化されるなどの成果が得られた一方、患者が治療をドロップアウトしてしまうケースなど、新たな課題も見えてきたと語った。
続けて行われた「大学病院総合診療科と地域鍼灸院での連携方法とその効果について」では、勝倉真一氏(獨協医科大学総合診療医学講座)が登壇。勝倉氏は、MUS(医学的に説明困難な症状)は治療が難しく、他覚的なアプローチが必要であるうえ、医師にとっても心理的負担が大きいと説明。そのなかで鍼灸の有効性が示唆されていることから、2024年度より地域鍼灸院との医鍼連携を開始したと報告した。紹介患者では慢性疼痛を中心に症状やQOLの改善がみられ、2年間で10人中8人(80%)の医師が鍼灸院への紹介を経験。医師へのアンケートでは75%が診療負担の軽減を実感したと回答があったが、患者が鍼灸院への紹介を断るケースもあり、今後は連携フローの共有や成功事例の提示が必要であると述べた。
「沖縄の地域中核病院における病「鍼」連携について」を担当した崎山広大氏(沖縄県立中部病院総合内科リウマチ膠原病科)は、沖縄県立中部病院での鍼灸連携として、紹介方法自体が分かりにくい課題があるため、医師と鍼灸師の「顔の見える関係」を構築することが初歩となると述べた。次に患者の同意を取得したうえで紹介状を作成し、医師が直接手渡し、患者がそれを持参して鍼灸院を受療、その施術内容および経過のフィードバックを医師は電子カルテにスキャンするといった具体的な紹介フローを共有した。加えて、定期的なWebカンファレンスを通じて連携の強化を図っていること、さらに医師側にも鍼灸・中医学の知識および制度理解が不可欠であると語った。
「プライマリケア領域との親和性を志向した認定鍼灸師制度の提言」にて丸山晃央氏(江北生協診療所/CFMD東京)は、家庭医診療所と地域鍼灸院の連携実践をもとに、慢性疼痛やMUSへの対応における鍼灸師の役割とIPW上の課題を報告した。現行の連携は形式的で情報共有機能が不十分であり、既存の認定制度は従属的構造を生みやすい点、またレッドフラッグ対応や医科への紹介教育不足を課題として挙げた。これらを踏まえ、PC領域に特化した連携鍼灸師制度の創設が提言された。最後にシンポジストに向けて、鍼灸師が地域IPWに参画するために医師・多職種に求められる変化、また地域医療・介護ネットワークの観点から鍼灸師に期待される役割や機能について問いを投げかけ、総合討論へとつなげた。
最後に「医鍼連携推進における一管見~開業鍼灸師の立場から~」と題して登壇した竹下有氏(清明院/一般社団法人北辰会)。少子高齢化と在宅医療の拡大を背景に医鍼連携の重要性が高まる中、竹下氏は開業鍼灸師として長年の訪問・外来診療および医療機関との連携実践に携わってきた経験から、医師・鍼灸師双方の相互理解や運用体制の構築過程における課題を整理し、連携推進に必要な視点についてアドバイスした。今、市井の鍼灸師にできることは草の根運動に尽きるとし、一症例ごとにしっかり診ると伝授した。聴講者からは活発な質問が寄せられた。


シンポジウム2「診療ガイドラインに基づく鍼灸の現状と展望~専門医学会との連携と鍼灸師の育成~」では、粕谷大智氏(新潟医療福祉大学リハビリテーション学部鍼灸健康学科)が「日本顔面神経学会における認定制度と鍼灸(師)の関わり~信頼性の担保された鍼灸師を目指すために~」について講演を行った。顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版における鍼灸の位置づけや、認定リハビリテーション指導士制度への鍼灸師の参画状況について報告した。
また、鈴木雅雄氏(福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室漢方外科鍼灸部)は「呼吸器疾患の緩和ケアと鍼治療のガイドラインについて」をテーマに発表。COPD患者を対象とした研究結果を基に、鍼治療による呼吸困難やQOL改善の可能性を提示し、呼吸器領域における鍼灸の役割を整理した。
さらに、菊池友和氏(日本鍼灸理療専門学校東洋医学研究所)は「頭痛に対する鍼灸治療」を講演し、頭痛診療ガイドラインにおける鍼灸の位置づけの変遷について解説した。片頭痛や緊張型頭痛に対する有効性に加え、医療連携の必要性にも言及した。
加えて、皆川陽一氏(帝京平成大学東洋医学研究所)は「慢性疼痛診療ガイドラインに基づく鍼灸の役割と課題」を発表した。慢性疼痛に対する包括的支援の重要性を述べ、多職種連携の中での鍼灸師の役割や今後の課題を提起した。

シンポジウム3「支持・緩和医療におけるがん患者に対する鍼灸治療の役割」では、山本信之氏(日本がんサポーティブケア学会)が「がん支持医療の現状と展望」について講演を行った。がん医療の進歩に伴い、患者を取り巻く課題が多様化している現状に触れ、支持医療が副作用対策のみならず、患者中心の包括的医療へ発展している状況について解説した。また、リアルワールドデータやデジタルヘルスを活用した今後の展望にも言及した。
続いて、石木寛人氏(国立がん研究センター中央病院緩和医療科)は「がん患者の疼痛に対する鍼灸治療の現状と可能性」を発表した。がん患者の慢性疼痛に対する鍼治療のエビデンスを概説するとともに、支持療法における非薬物療法の必要性を説き、今後のエビデンス構築に向けた課題を指摘した。
さらに、大畑めぐみ氏(東京科学大学病院緩和ケア科)は「緩和医療にかかわる医師を対象とした鍼灸シンポジウムを開催して~がんプロフェッショナル養成プランの活用~」をテーマに講演した。教育プログラムの取り組みを報告するとともに、多職種連携における鍼灸師の役割に着目し、病院でのさらなる活躍への期待を述べた。
また、星野直志氏(神奈川県立がんセンター東洋医学科)は「がん専門医療機関における鍼灸介入の実態と支持療法へ役割の検討~外来および緩和ケア病棟への導入過程の分析~」を発表した。鍼灸介入の実態を報告し、外来から病棟へと段階的に拡大した過程を整理するとともに、医療連携の重要性を強調した。
神田かなえ氏(香川大学医学部公衆衛生学)は「緩和医療における灸治療の実際」を講演した。オピオイド誘発性便秘に対する症例集積結果を紹介し、灸治療が補完的手段となり得る可能性を提示したほか、実臨床への応用について考察を加えた。


シンポジウム5「生成AIを使用した授業計画」では、松下美穂氏(森ノ宮医療学園専門学校校長事業室室長)が生成AIを用いた臨床推論の試みとして、模擬症例の作成やPBL(課題解決型学習)への応用可能性を示し、授業実践への具体的展開について報告。安藤昇氏(青山学院大学非常勤講師)は、生成AI等の利便性の高いツールへの依存により思考過程が省略される「思考の空洞化」について定義し、その予防に向けた教育的視点を提示した。加えて学習者による活用事例も共有され、現場での実践と課題が多角的に議論された。会場からは画像内文字の編集方法に関する質問があり、画像と文字の個別対応での作成で可能となる旨が示され、編集に適したソフトとしてCanva(キャンバ)を推奨した。

実技セッション
実技セッションでは、美容鍼灸、お灸、小児鍼灸、長谷川流の4セッションを行った。
1.立体造顔美容鍼によるリフトアップ実演
岡本真理氏(日本メディカル美容鍼協会・麻布ハリーク)
医学的知識に基づいた美容鍼灸理論と実技を融合させた「立体造顔美容鍼」によるリフトアップ技術を実演した。顔面の加齢変化やたるみの要因について解説し、筋・筋膜・皮下組織の立体構造を踏まえた施術を紹介。必要最小限の鍼数で最大限の効果を目指す鍼通電設計や筋連動を活用した引き上げ技術、安全性を考慮したリスクマネジメントについても説明した。実技では、頭部へのアプローチにおいて、押圧後に次の部位へ手を移動する際は一度手を浮かせ、髪を引っ張らないよう配慮することなど、施術時の細かな手技上のポイントを解説。また、刺鍼は基本的に直刺で行う一方、側頭筋への施術では頭蓋骨への接触を避けるため斜刺を用いるなど、安全性と効果を両立するための具体的な技術についてもレクチャーした。刺鍼前後の変化を通して、施術の即時効果と再現性を示した。

2. 温度が大事 紫雲膏灸の基本
三村直巳氏(東京呉竹医療専門学校)
紫雲膏を皮膚に塗布して行う「紫雲膏灸」を概説し、成立背景として、安藤譲一氏が考案し、越石まつ江氏によって発展した経緯について触れた。紫雲膏灸には糸状灸と多壮灸の2種類があり、それぞれ異なる温度特性と刺激感覚を特徴として挙げた。糸状灸は急性疼痛や感覚異常、皮膚疾患などに、多壮灸は慢性疼痛や冷え、内科系疾患などに用いられる。温度による刺激の違いが治療効果に関与するとして、急性疼痛と慢性疼痛に分けた施術方法の実演を行った。

3. 小児鍼 ~子育てに寄り添う鍼灸を目指して~
篠原新作氏(しのはら鍼灸院)
経絡治療は、乳幼児から高齢者まで同一理論でアプローチできる点を強調し、「小児鍼」を一領域として、不妊治療から妊娠中・産後ケアへと連続する母子支援の流れとして臨床が展開されている点を示した。愛媛県今治市では小児鍼が日常的に行われるなど鍼灸文化が根付いていた一方、徳島県では受療文化の差により普及が進まなかった経緯を述べた。これを受けて「親子スキンタッチ」を考案し、市民講座やイベント、メディアを通じた啓発活動を展開。さらに、現在では小児鍼および親子スキンタッチが行政の子育て応援クーポン事業に参入している現状にも言及した。生後2か月から施術可能であり、成長段階に応じて治療内容を段階的に移行し、幼児期以降には毫鍼や透熱灸、必要に応じて刺絡を用いるとした。併せて、それぞれの適応、使用場面、施術上の注意点について実技を通して提示した。

4. 長谷川流鍼灸メソッドにおける「引き鍼」技法の提唱と実技供覧~非刺入型体表操作としての新規鍼技法の開発~
長谷川吾朗氏(一般社団法人国際臨床鍼灸研究会長谷川流鍼灸メソッド)
長谷川流鍼灸メソッドにおける「引き鍼」技法について、その理論と実技を供覧した。引き鍼は、経絡上の硬化部位を対象に、刺入をせず鍼体を皮膚上で操作することで刺激を与える非刺入型の鍼技法として紹介された。さらに触診により体表に現れる異常反応を把握し、少数穴による治療と組み合わせて気血の調整を図るとした。実技では、硬化やしこりに対する反応の変化や、留鍼後に残存する症状への応用が示され、低刺激でありながら身体反応を引き出す手技としての臨床的意義が報告された。

第76回となる次回大会は埼玉県での開催が予定されている。































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