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中国鍼灸学会「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」(1)(医道の日本社訳)

公開日:2020年11月21日

2020年3月2日、新型コロナウイルスに関して、中国鍼灸学会は「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」を作成し、世界鍼灸連合会(WFAS)を通じて発表しました。本記事では、医道の日本社の訳を掲載します。

※新型コロナウイルス流行先行国である中国の治療の参照が目的であり、使用を推奨するものではありません。中国での実際の治療は、感染防御・対策されたうえで行われていることをご留意ください。

【原文】
http://en.wfas.org.cn/news/detail.html?nid=5403&cid=25

▼本記事の後半は下記よりご覧ください。
中国鍼灸学会「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」(2)

COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)

新型コロナウイルス(COVID-19)は急性呼吸器感染症であり、感染力が強く、広く感染しやすく、人々の生命と健康に重大な脅威をもたらす。「中華人民共和国伝染病防治法」に規定される乙類の感染症に含まれており、甲類の感染症に準じた措置を講じられている。

COVID-19は、中医学における「疫病」のカテゴリーに属する。何千年もの間、中医学は、疫病と闘う医療の実践において、長期にわたり豊富な経験を蓄積している。中医学の重要な部分として、鍼灸は独自の特徴と利点を持っており、中国の疫病対策の歴史の中で重要な貢献をしている。

中医学の古典には、疫病予防と治療のための鍼灸の関連記録がある。例えば、唐代の医師である孫思邈は、その著書『備急千金要方』の中で、「およそ呉や蜀の土地に赴任する役人は、常に体の2・3箇所に灸をして、灸痕が消えないようにすべきである。そうすれば瘴癘・温瘧・毒気などに感染することはない」と記している。

明代の医師である李時珍は、著書『本草綱目』の中で、「艾葉……灸をすれば、多くの経脈が通じ、さまざまな病邪を治し、長患いの人を健康することができ、その効果には大きいものがある」と述べている。これら2冊の本はどちらも鍼灸が伝染病を予防し、治療できることを記録している。

現代の臨床研究や実験研究では、鍼灸がヒトの免疫機能を調整し、抗炎症作用や抗感染作用を発揮することが示されている。鍼灸は伝染病の予防と治療に積極的な役割を果たしている。中国の鍼灸治療は突然現われたCOVID-19に直面して、予防とコントロールに積極的に参加し、良好な結果を得ている。

COVID-19に対する理解を深め、鍼灸治療による臨床経験を蓄積してきたことから、国家衛生健康委員会弁公庁と国家中医薬管理局弁公室が発行した「COVID-19の診療方案(試行第6版)」と「COVID-19の回復期における中医学的リハビリテーションの提案(試行版)」に従い、我々は、鍼灸の実施と在宅患者への指導に携わる医療従事者向けに「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」を作成した。

Ⅰ.鍼灸介入の原理

ⅰ.疫病の流行中、鍼灸介入は、全体の状況にあわせて、あらゆるレベルの医療機関の指導の下、組織的に実施する。鍼灸治療期間においては、隔離・消毒の要件を厳格に遵守した上で施術する。確定例と回復例の鍼灸治療では、複数の患者を同室で治療することができるが、疑い例では個室で治療する。呼吸補助による酸素療法中は、安全が保障される状況下において灸法を使用する。

ⅱ.COVID-19に対する中医学の臨床診断、病期分類、分類、症候群の鑑別は、国家衛生健康委員会弁公庁と国家中医薬管理局弁公室が発行したCOVID-19の診療方案に従う。同時に、鍼灸の特徴を十分に考慮して、鍼灸の介入をより適切なものとする。COVID-19は「五疫」の1つであり、広く感染しやすい。「(五疫は)みな感染しやすく、年齢に関係なく、症状も似ている」(訳注:『黄帝内経素問』遺篇・刺法論)。

疫病は口や鼻から人体に入り、その多くはまず肺、次に脾、胃、大腸に侵入する。病変は比較的軽度であるが、ごく一部は心包、肝、腎に逆伝して重症化する。疾患は急速に変化し、明確な核心となる病態と症候群の進展がある。「経脈は、内は臓腑に、外はツボに連絡する」ルートによって、鍼灸は身体のツボを刺激し、経絡を通じて病所を直接攻め、臓腑の経気を刺激強化して、侵入する疫病の邪気を潰滅して分離・駆除し、正常に戻す。同時に鍼灸治療は気を刺激して、内臓の自己防衛を改善し、疫病によって引き起こされる臓腑の損傷を軽減する。

ⅲ.鍼灸介入は、病態の進展に応じて、医学観察期、臨床治療期、回復期の3つの病期に分けて行う。治療は、臓腑と経脈の弁証による鑑別を通じ、主穴を中心に、臨床症状に応じて適切に穴を増減し、「取穴は少なく精選するのがよい」の原則を尊重して行う。鍼灸施術は、便利、単純、安全、有効の原則に基づき、特定の条件に応じて適切なものを選ぶ。適切な条件を作成し、すべての臨床病期で鍼灸の役割を果たすように努める。

鍼灸は、臨床治療期において生薬と併用して、相乗効果的役割を果たすことができる。回復している患者の治療は、鍼灸に最大限の中心的役割が与えられるべきである。我々は、COVID-19に対して、鍼灸を主体としたリハビリテーションクリニックを新たに設立することを推奨した。

ⅳ.鍼灸のツボと方法の選択は、古典や現代の臨床・基礎研究のエビデンスに基づき、神経性調節による肺機能の改善、自然免疫の制御、抗炎症・炎症促進性の要素、コリン作動性抗炎症経路の活性化、呼吸器系の制御、肺炎による損傷の克服に関する鍼灸の先行研究で示された研究成果を統合している。

ⅴ.鍼灸師の指導の下、患者はインターネット、携帯端末及び関連アプリ、WeChatなどを利用して、灸、ツボへの(訳注:薬物の)塗布(療法)、ツボマッサージ等を患者自身あるいは器具を用いて行うことで、補助的疾患治療を成し遂げ、心身のリハビリテーションを促進することを推奨される。医師と患者のコミュニケーション、経過観察、および診断・治療データのタイムリーかつ完全な収集による総合的な分析に注意を払う。

監訳:荒川緑氏(学校法人素霊学園 東洋鍼灸専門学校 図書館長)

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