『劉勇の疾患別臨床鍼灸・テクニック』の著者・劉勇氏インタビュー
ビートたけし氏の顔面神経麻痺を治療したり、クイックマッサージを世に広めたことで有名な劉勇(りゅう・ゆう)氏。2002年に出版した『劉勇の疾患別臨床マッサージ・テクニック』に続き、今春『劉勇の疾患別臨床鍼灸・テクニック』を上梓しました。今回は劉勇氏に、新しい本の内容などについて聞きました。
―― 鍼灸の本を書かれたのは、何か特別なお考えがあったのですか。
劉 日本において鍼灸治療を受けた経験がある人は、国民のわずか7%という数字が発表されています。日本の国民にもっと鍼灸に親しんでいただきたいと思いました。そのためには鍼灸師の技術が上がらなければならない。学校を卒業したばかりで臨床経験を積んでいない人にもわかりやすく、すぐに応用できる本を目指しました。微力ながら鍼灸の普及に貢献できれば、と思っています。
―― 劉先生のご出身である中国と、日本とでは、鍼に対する国民の認識はだいぶ違いますか。
劉 まったく違います。中国で鍼灸はごく身近な医療です。日本では「鍼は痛い」というイメージがあり、治療を受けるにも勇気が必要です。それに、鍼灸治療がヘルペス、顔面神経麻痺、メニエール病などの疾患も得意とすることがあまり知られていない。そのために、日本では鍼灸はあまり普及していないのではないでしょうか。患者に分かりやすく説明する努力が治療家には必要だと感じます。
そして、目に見えるような効果を上げることが大事です。臨床の場では患者の変化が大きいので、それについていく対症療法も重要。慢性的な内臓疾患の場合は目に見えませんから、一定期間患者が治療院に通えるように治療の経過を説明することと全体的にみることが大事ですね。
―― 劉先生は、ビートたけしさんの顔面神経麻痺を治療したことで有名です。
劉 麻痺した顔面が回復したのは、目に見える効果ですね。東洋医学の素晴らしさを証明し、鍼灸の良さを知らせるいい機会だったと思います。治療ではまず、短時間で効果を出さなければならない、同時にその効果を持続させること。そのために正しくツボを選ぶことが大事です。
―― そのテクニックも、この本のなかには入っていますか?
劉 はい。とくに初心者のかたや現在臨床しているかたは本をきちんと読み取って、追試してみてください。結果が出れば自信につながると思います。
―― それにしても先生が選ぶツボは独特だなと感じますが。
劉 奇をてらったことをしているわけではありません。30年以上の臨床のなかで得た部分が大きいです。私だって最初のころは模索の連続で、苦労しましたよ。
―― 先生の治療は深く刺鍼する場合が多いようですし、鍼の種類を選ばないとのことですが、真似をしても大丈夫でしょうか。
劉 患者のなかには太っている人もいますし、痩せている人もいます。体重が53キロの人と80キロの人と40キロの人とでは、刺鍼の深さも完全に違います。みな同じ治療というわけにはいきません。
―― 東京メトロ銀座線の「外苑前」駅から直通、徒歩数十秒という利便性の良い場所にご自身の治療院「ハリアップ」を開院されました。都会の真ん中の治療院に通う患者さんに特徴はありますか。
劉 難しい症状が多いです。肩こり、腰痛だけではなく、がんなどの難病を抱える人も来ています。最近特に要望が多いのは美顔ですね。
――最後に今後の抱負をお聞かせ下さい。
劉 日本の国民にとって、鍼灸がもっと気軽に接するものになれば、と思います。現代は「速さ」と「清潔感」が要求されているので、そのニーズにこたえられるようにしたいです。また、日本の鍼灸師は学校を卒業してすぐに開業することができますが、臨床で何をすべきかがわからない、どういう治療法を組み立てていいのかがわからない人が多いですね。そんな人たちのためにも、定期的に勉強会を開催していくつもりです。
劉 勇(りゅう・ゆう)
医学博士・鍼灸師。Liuマッサージ・ハリ「ハリアップ」院長、北里大学薬学部医薬開発部客員教授、中国政府認証外国専門家、北京中医薬大学顧問。1958年中国生まれ。中国で外科医として活躍した後、活動の拠点を日本に移す。東京鍼灸マッサージ専門学校(現在の東京医療福祉専門学校)卒業。1985年、東京・銀座に鍼灸治療院を開く。氏の鍼灸治療は西洋医学の理論と東洋医学の技術を融合した治療法。症状別治療や顔面神経麻痺治療を応用した美容鍼など、幅広い分野での臨床勉強会を開催。後継者の育成にも力を注ぐ。
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