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カスハラが治療院の責任にもつながる?カスタマーハラスメントの実態とその対処法

公開日:2022年9月30日

カスハラとは「カスタマーハラスメント」の略語で、悪質なクレームをはじめとする、顧客からサービス提供者が受けるハラスメント行為を指します。

カスハラは多くのサービス業が頭を悩ませる問題であり、治療院も例外ではありません。

サービス提供者である治療院は、カスハラにどのように向き合えばよいのでしょうか。

本記事では、昭和初期から治療院に関わってきた医道の日本社が、カスタマーハラスメントの実態と対処法についてご紹介します。

「なぜカスハラが起こるのだろう?」

「カスハラにはどのように対処すべきか?」

このような疑問をお持ちの方は、ぜひご参考にしてください。

最近よく耳にするカスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

ハラスメントは、日本語に訳すと「人を困らせること、いやがらせ、いじめ」です。

顧客や取引先(カスタマー)からサービス提供者に向けられる、過剰な要求や不当な対応(ハラスメント)を指す言葉が「カスタマーハラスメント」です。

クレームとカスハラの境界線

顧客からサービス提供者への意思表示のひとつに、クレームがあります。クレームとカスハラは似て非なるものです。

クレームは、サービスや商品に対する改善要求を含む意見です。サービス提供者を攻撃することが目的ではなく、顧客側が本来受けるべき正当な権利を主張する行為です。

一方のカスハラは、度を越した要求や権利を求める場合を指します。サービス提供者の不備に対する攻撃的な追究や、反抗できないスタッフに対するパワハラ・セクハラなど、法的な問題も発生しかねない行為が多く含まれており、顧客による正当な権利の要求ではありません。

カスハラの実態

では、実際にカスハラと呼ばれる行為には、どのようなものがあるのでしょうか。いくつかの例を挙げていきます。

長時間、スタッフに対し威圧的な態度をとる

カスハラの代表的な行為のひとつが、スタッフに対する威圧的・攻撃的な態度です。スタッフを大声で威圧・罵倒する、長時間に渡り説教するといった、強い精神的負荷をかける行為は、カスハラに該当します。

土下座など過剰な謝罪を強要する

スタッフに対する威圧的な行為だけでなく、土下座などの過剰な要求をする顧客も存在します。度を越した要求は多くの場合何らかの犯罪行為に該当することから、社会的にも大きな問題として扱われています。

例えば、店側から常識的な謝罪を受けているにもかかわらず、机や壁を蹴り恫喝する行為は「脅迫罪」。店やスタッフに危害を加えることを匂わせながら金品を要求する行為は「恐喝罪」。土下座による謝罪といった、スタッフに義務がないことを脅迫を用いておこなわせる行為は「強要罪」。さらに、これらの行為により業務を妨害すると「威力業務妨害罪」が適用される可能性があります。

自院に対し過剰なサービスを要求する

攻撃的な態度でなくても、カスハラにつながることがあります。

一般的なサービス以上の過剰な対応を要求したり、特別な対応を求める行為も、度が過ぎるとカスハラにあたる場合があります。

例えば治療院では、顧客から「もっと長く治療してくれ」「メニューにない治療をしてくれ」といった要求をされる場合があります。これだけではまだカスハラとは呼べませんが、店側が要求に応じないことで顧客の態度が攻撃的になったり、暴力や脅迫につながったりする場合は、カスハラに該当します。

カスハラが増えている原因

サービス提供者に対する過剰な要求は以前から存在していたものの、近年は特にその傾向が目立つようになりました。なぜカスハラが増加しているのでしょうか。

ストレスをかかえた顧客が多い

ストレス社会と呼ばれる近年では、さまざまな理由からストレスを溜めこんだ人が増えているといわれています。

職場・学校・家庭といったさまざまな要因でストレスを溜めた人々が、精神的に解放される時間が持てなくなった結果、顧客に逆らわないサービス提供者を標的に、日頃の鬱憤を爆発させるようになったといわれています。

SNSの普及がもたらす暴言への慣れ

現代ではインターネットの発達とともに、SNSが広く普及しています。

SNSはあらゆる人々と交流できる利便性がある一方、匿名による発信のしやすさから、不満や文句といった負の感情を発信するツールとして使われやすいという側面もあります。

一部の人たちは、日頃からSNSを利用することにより、強い言葉で誹謗中傷したり、暴言を吐いたりすることに無意識の慣れが生じてしまっています。

これにより、現実においても脅迫や名誉毀損といった法的なトラブルを引き起こしてしまうのです。

患者さんへの過剰なサービス

日本には「おもてなし」という言葉も存在し、サービスの質が非常に高い国であるといわれています。世界に誇れる品質のサービスを日常的に受けられるのは喜ばしいことですが、高品質のサービスが当たり前となってしまい、他店で受けられたサービスがどこでも受けられると考える傾向が強まっています。

他店で受けたサービスを受けられないことが不満となり、過剰にサービスを要求する、本来提供していないサービスを強要するといったケースが増えています。

カスハラを放置すると自院に損害をもたらすおそれも

多くの患者さんを迎え入れる治療院にとって、カスハラは決して他人事ではありません。カスハラの放置は自院にとって大きな損害を生む可能性があるため、早急な対処が望まれます。

スタッフが辞めていくおそれ

カスハラは、顧客からスタッフに対しておこなわれます。顧客から理不尽な扱いを受け、心身に傷を負ったスタッフは、仕事を続けていくのが困難となります。

しかしスタッフが変わったところでカスハラが止まるとは限らず、対象を変えて継続されるケースも少なくありません。そのため、別のスタッフを雇ってもカスハラによって辞めてしまい、常に人材不足に苦しまされることになりかねません。

自院の評判やイメージの低下

理不尽な要求や横暴な態度は、見ている周囲の人にも不快な思いをさせます。カスハラに対し適切な対処をおこなわない治療院は、ほかの優良な顧客からの信頼をも失いかねません。毅然とした態度を取れない、カスハラに対応しない治療院として悪評が口コミやSNSで広まり、イメージの低下は避けられないでしょう。

治療院の顧客は周辺住民が大半であるため、一度悪評が広がると、地域に根ざした経営をする治療院は集客に苦戦することになります。

自院がスタッフに訴えられるケースも

企業や組織は、スタッフが健康的で安全に働けるように配慮する「安全配慮義務」を課せられています。治療院も同じで、カスハラからスタッフを守り心身に負担をかけないようにすることも、安全配慮義務の一部とみなされます。そのため、カスハラで仕事を続けられなくなった場合、元スタッフから自院が訴えられるおそれもあります。

また、カスハラが原因で治療を受ける必要が生じた場合には、治療費や働けなくなったことに対する損害賠償といった、多額の金銭を支払わなければならないケースもあります。

治療院でかんたんにはじめられるカスハラ対策

カスハラを放置することで、治療院が受ける損害の大きさは計り知れません。健全な治療院経営のためにも、カスハラ被害を軽減する対策を準備しておきましょう。

対策マニュアルを作成しスタッフに浸透させる

スタッフが勝手な判断で対応してしまうと、のちのち大きな問題にもつながりかねません。また、カスハラへの対応方針がはっきりしていないと、スタッフは一方的に理不尽な要求を突きつけられることになります。

それを避けるためには、カスハラへの対応について、あらかじめ対策マニュアルとしてまとめて、スタッフ全員に周知しておくとよいでしょう。カスハラに対して一定のルールで対応できることがわかっていると、スタッフ側も安心して業務に従事でき、精神的安全性を得やすくなります。

また、対策マニュアルの存在が自院のスタッフを守る姿勢の表れにもなり、スタッフの自院に対する信頼感にもつながります。マニュアルの内容を研修などを通じてスタッフに浸透させ、安心して働ける環境を整えましょう。

絶対にスタッフひとりで対応させない

カスハラをおこなう人の多くは非常に攻撃的であり、ときには暴力を振るうこともあります。特にスタッフがひとりだけの際には相手も気が大きくなり、行動がエスカレートしやすくなります。対応は常にふたり以上でおこなうのが望ましいでしょう。

顧客の行動や言動がどこかおかしいと感じたときに、すぐに上司や同僚にヘルプを求められるよう、日頃から複数人であたるなどの業務体制を作っておきましょう。マニュアルにも複数人でカスハラに対処する際の流れを組み込んでおくと、カスハラへのスムーズな対応が期待できます。

場合によっては弁護士や警察に相談する

カスハラは、内容や程度に応じて刑法上の犯罪行為に該当します。悪質なカスハラ行為は、スタッフだけでなくほかの顧客や治療院そのものにも悪影響を及ぼすため、場合によっては弁護士や警察に相談するといった対応も求められます。

自院への悪評を恐れ弁護士や警察の介入を避けると、放置したカスハラが原因で取り返しのつかない事態になってしまうこともあります。また、相手に法的な責任を求める場合に、専門家でなければ対応できないケースもあるため、適切なタイミングで弁護士や警察へ相談するルールを定めておくとよいでしょう。

まとめ

カスハラは顧客からサービス提供者に向けられるハラスメント行為です。その影響はスタッフの心身に大きな傷跡を残すだけでなく、治療院の経営に大きなダメージを与える場合もあります。

カスハラ行為の多くは法的な責任を問われる行為に該当しますが、相手が一般顧客であることから、大ごとにしにくいと考える治療院オーナーも少なくありません。

しかしカスハラを放置しても、自然に解決することはほとんどなく、被害は広がり続けます。スタッフと治療院を守るためにも、専門家の介入を含め、適切な対応ができるよう日頃から対策を準備しておきましょう。

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