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「即効性」「再現性」「多様性」の実現!書籍「よくわかる長野式治療」の著者長野康司先生へインタビューしました!

公開日:2023年5月15日

鍼灸の名人と呼ばれる故・長野潔氏が創始した「長野式治療」は、臨床における“治すこと” に主眼をおいた東西折衷の治療法です。

「即効性」および、初心者でも効果が出せる「再現性」、多くの疾患に対応できる「多様性」がある、独創的かつ実践的な鍼灸治療法として多くの治療家に取り入れられています。

東洋医学の古典理論と脈診・腹診などの手技を用い、西洋医学の理論や知見を融合させ、病気を起こしている要因を探り、病人をまるごと診るという特徴をもっています。

長野 潔氏が長年にわたる臨床経験において発した疑問について、寝食を忘れるほどの時間を費やし、多くの医学文献を調べ研究を重ね、仮説を立て、検証、理論構築を行い新しく創りあげた画期的な治療体系が長野式治療であり、日本はもとより、アメリカ、ブラジルをなど海外でも広く知られ取り入れられています。

本記事では、

長野式治療って難解と聞いたけど実際はどうなんだろう

長野式治療を臨床に取り入れたい

長野式治療についてもっと知りたい!

との皆様の声にお応えして、書籍「よくわかる長野式治療 日本鍼灸のスタンダードをめざして」の著者 長野康司先生へインタビューしました!

書籍「よくわかる長野式治療 日本鍼灸のスタンダードをめざして」について

本書は長野潔氏の子息である長野康司氏による書き下ろしであり、臨床に即した構成で長野式治療の案内書の位置づけとして執筆されています。

長野式治療の概要から、症例、分野別の各疾患処置の章立てとなっていて、わかりやすい言葉・図解を用い、初心者でも長野式治療を理解して臨床で役立てることができるような内容になっています。

長野式鍼灸治療法の奥義書である長野潔氏の名著「鍼灸臨床わが三十年の軌跡」、同じく同氏の臨床論文集「鍼灸臨床新治療法の探究」から長野式治療を学び始めることにハードルが高いと感じていた方にもおすすめです。

長野式臨床研究会のセミナーでの質疑応答の中から厳選した127項目のQ&Aの章は、経験を積んだ鍼灸師の方にも大いに役立つ内容であり、臨床で生まれる疑問や迷いを解決へと導いてくれます。

西洋医学的知識から入ることもできる長野式治療は、これからの地域連携における鍼灸の臨床にも大いに役立つことでしょう。

長野式治療の診察(問診、脈診、腹診、腰背診、火穴診、局所診)、治療法(免疫系処置、血管系処置、神経・内分泌系処置、筋肉系処置、気系処置)の解説、症例、分野別疾患処置まで、臨床に即して書かれており、まさに日本鍼灸のスタンダードとしての必読書とも言える1冊です!

長野康司先生のご紹介


1956年、大分県生まれ。1980年、東京鍼灸柔整専門学校(現東京医療専門学校)卒業。1980~1984年、各研究会、流派に参加することで、先代長野潔が創始した長野式治療の価値を再認識。1998年、「医道の日本」誌に症例発表開始。同年、長野式臨床研究会を立ち上げる。2011年、ドイツにおける「日本の伝統医学と文化第1回学術大会」にて講師の1人として講演。日本はもちろん、海外においてもセミナーを開催し、長野式治療の普及に努めている。大分にて鍼灸院経営。出演DVD『【DVD】よくわかる長野式治療(医道の日本社)』がある。
<長野式臨床研究会>
https://naganoshiki-shinkyu.com/

長野康司先生にインタビューしました!

――「よくわかる長野式治療」をまとめられた経緯や想いを教えてください。

長野 まず、先代が著した本が難解で学生や初心者にとっては敷居が高いという評判を聞いていまして、もっと分りやすい長野式治療を伝えたいと思ったこと。それから私がこの本を上梓した2015年まで約35年間の臨床記録、知見があり、それを公表しようという考えもありました。

――これから学ぶ方に向けて、改めて長野式治療とはどのような治療か教えてください。

長野 

まず、特徴として3つあります。
1つ、病める人を診るとき、単に病気(主に体)だけを診るのではなく、その人のその症状が出るに至った経緯や背景まで掘り下げて診る。つまり、病人の現病症は勿論、既往歴、体質、家族歴、服薬の有無や食・便・睡の日常生活状態等、丸ごと診て把握するということ。

2つ、人には誰しも自然治癒力というものが備わっています。私たちはこれを阻害する要因として ① 免疫系の低下等の異常 ② 血流の変調 ③ 自律神経・内分泌系の不調和 ④ 筋肉系の硬化・弛緩 ⑤ 気の巡りの変調 という5つも面から取り上げ、これにアプローチする対処法を創り上げています。

3つ、上記の5つの分野の異常に対する対処法(処置法)が確立しており、これに繋がる診断法(問診、脉診、火穴診、局所診等)も設定していまして、鍼灸独自の長野式診断治療システムを整えています。

長野式臨床研究会代表の長野康司氏が、診察法から処置法までをわかりやすく解説。

――長野式治療の特徴のひとつに丸ごと治療とあります。フィジカルアセスメントが類するかと思いますが、詳しく教えてください。

長野潔氏が永年の臨床現場で独自に研究や思索を重ね、延べ三十万症例に及ぶ臨床経験から創り上げた「即効性と再現性」のある独創的で実践的な長野式鍼灸治療法。

長野 西洋医学ではデータや画像等を診て、異常の有無を判断しますね。しかし、病める人は必ずしもデータなどに異常が出るとは限りません。重複になりますが、その症状が発現に至った背景を探っていく。それが前述した既往歴や家族歴、体質、性格など問診を丁寧にやっていく。問診を深堀することで丸ごとその人のフィジカルの病気だけでなくメンタルを含めたその人を診ていくということです。

――長野先生ご自身が、長野式治療を習得するまでにご苦労されたこと、興味深かった事などのエピソードを伺いたいです。

長野 専門学校を出て、3年くらいは「隣の芝生は青く見える」ように感じて、いろんな研究会や学会に顔を出していました。しかし、何か満足するものがなく現代という時代に生きているわけで、西洋医学と鍼灸医学の融合した長野式治療がしっくり来ましたし、これからの鍼灸医学になっていくだろうなという思いが強くなっていきました。

――長野式治療には得意分野、また難しいと思う疾患または治療はありますか?

長野 そうですね。運動器、循環器、呼吸器、消化器、泌尿器各疾患など全科に及んでおりまして、これらの機能的な疾患、症状に対しては多くの好結果を出しています。ただ、器質的病変の疾患、例えば石灰化炎症、心筋梗塞、肺気腫、各種がんや難病等は長野式だけでなく、鍼灸治療でも難しいですね。

――スポーツでの運動機能での怪我や損傷(例えば捻挫や筋肉疲労など)の治療も脈診からの手順で行いますか?

長野 基本的には問診から始めて脉診、腹診、局所診等の順でやっていきます。勿論、局所は触診してよく観察します。骨折や靭帯断裂などは鍼灸の不適用ですから除外診断をしながら診察していきます。

――症例の記載の中の「脈がわかるということは、見えないものがみえてくることになる」との先生の言葉が改めて印象的でした。脉診を難しいと感じている治療家は多いと思います。脉診習得の要は何でしょうか?

長野 まず「脉は難しい」という先入観を持たないことです。最初はただ脉に触れてみる。そこに参加する。何人も脉をただみていく。その中で浮、沈、遅、数を意識的に診ていくことです。これが少しでも分かってきたら緊、弦、滑というイメージと指の感覚を照らし合わせてみる。このような作業を繰り返すことによって徐々に脉が分かってきます。そして見えないものが見えてきます。

長野式臨床研究会
全国でセミナーを開催し「即効性と再現性」のある長野式鍼灸治療法を広く伝え、長野式治療師を育成している。

――長野先生が治療にあたり大事にしている事は何ですか?

長野 

患者の病状や診察からの所見のわかりやすい説明と予後の見通しを話し、患者に不安感を与えない、安心させるということですね。

――これから、長野式治療を学ぼう、または学び直したいと考えている治療家へのメッセージをお願いいたします。

長野 長野式治療は臨床現場から生まれた「生きた治療法」です。即効性、再現性、多様性に富み、多くの治療家の先生方に受け入れられています。長野式は難しいものではなく、西洋医学と古典医学の折衷で学生や若い人、初学者には入りやすく、学びやすいものになっています。更に学びたい方は全国各地(北海道、東京、静岡、名古屋、大阪、愛媛、福岡等)でセミナーを開催しております。「結果の出る治療」を求める方はご参加下さい!

――お忙しいところ、ご丁寧にお答えいただきありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。長野式治療についてだけでなく、長野康司先生の広い視野をお持ちで優しいお人柄も感じられた貴重なインタビューとなりました。「よくわかる長野式治療」は、初心者にもわかりやすくまとめられた書籍ですが、症例や分野別の各疾患処置も多く解説されていますので実践にも役立ちます。長野式を知りたい方は必読の1冊です!

よくわかる長野式治療 日本鍼灸のスタンダードをめざして
著 : 長野康司
【DVD】よくわかる長野式治療
出演 : 長野康司
【DVD】長野式鍼灸処置法の実際 〔入門編〕
出演:[PART1] 長野 潔
[PART2] 松本 岐子
協力:[PART1] 長野 康司
[PART2] 村上 裕彦
【DVD】長野式鍼灸処置法の実際 〔臨床編〕
出演:[PART1・2] 長野潔
[PART 3] 松本岐子

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