50代から鍼灸師を目指すのは遅い?資格取得の流れやメリット・デメリットまで解説

50代から生涯続けられる仕事として、「鍼灸師」を考えている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、未経験から本当に鍼灸師を目指せるのか、年齢がハンデにならないか、鍼灸師として食べていけるのかなど、さまざまな不安もあるかと思います。
そこで今回は、50代から鍼灸師になるための資格取得の流れや費用、メリット・デメリット、キャリアまでを具体的に解説します。
鍼灸師を目指す一歩を踏み出すための判断材料として、参考にご覧ください。
50代から鍼灸師を目指すことはできる?
「50代からでも鍼灸師を目指せるのか?」と不安に思うかもしれませんが、結論から言えば可能です。
実際に、資格取得や受験資格に年齢の上限はありません。とはいえ、国家試験の難易度や、今から勉強についていけるか心配な方も多いでしょう。
ここでは、国家試験の合格率や学習面の現実など、50代から目指す上での具体的なハードルについて解説します。
年齢制限はある?
鍼灸師になるために必要な「はり師」「きゅう師」の国家資格には、受験資格に年齢の上限が設けられていません。高校を卒業していれば(18歳以上)、何歳からでも挑戦できる生涯有効な資格です。
ただし、資格取得のためには国が指定する専門学校や大学などで、3年以上学ぶ必要があります。
なお、視覚障害者の方については、受験資格に特例が設けられています。「中学校卒業(または中学校を卒業する見込みの者)であって、高等学校に入学することのできる者」とされ、かつ養成施設で5年以上学ぶことで受験資格が得られます。
過去5年での国家試験の合格率推移
「今から勉強して合格できるか不安」と感じるかもしれませんが、国家試験の合格率は比較的高い水準で安定しています。過去5年間(2021〜2025年)の合格率を見ても、はり師・きゅう師ともに、おおむね70%前後を推移しています。
| 試験実施年度 | はり師 | きゅう師 |
| 2021年 | 70.0% | 72.2% |
| 2022年 | 74.2% | 76.1% |
| 2023年 | 70.4% | 71.7% |
| 2024年 | 69.3% | 70.2% |
| 2025年 | 73.9% | 74.9% |
参考:厚生労働省|はり師・きゅう師国家試験の合格発表について(第29回、第30回、第31回、第32回、第33回)
学習面での不安がある
前述の通り、はり師・きゅう師の国家試験の合格率は比較的高い水準で安定していますが、学習面でのハードルは考慮すべき点です。
学校では解剖学や東洋医学など、専門的な知識を基礎から学びます。若い学生たちと机を並べて学ぶことや、特に社会人の方が夜間部に通う場合の、体力的な負担を感じる可能性はあるでしょう。
こうした学習面の具体的な課題については、後のデメリットのセクションで詳しく触れていきます。
鍼灸師になるための3ステップ
実際に鍼灸師になるには、国が指定する養成施設(専門学校や大学)で3年以上学び、国家試験に合格する必要があります。この国家資格(免許)を取得して初めて、鍼灸師として働けるようになります。
ここでは、鍼灸師になるために必要な3つのステップを解説します。
ステップ1|専門学校や大学など学校を探す
まず、厚生労働省や文部科学省が指定する養成施設(専門学校など)を探し、入学します。鍼灸師として活動するには「はり師」「きゅう師」両方の国家資格が必要ですが、日本の多くの養成校では、3年間で両方の資格取得を目指せるカリキュラムが組まれています。
鍼灸師を目指すための養成施設(学校一覧)は、下記リンクからご確認ください。
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の3つの国家資格取得が可能な専門学校もあります。
大学・専門学校一覧
ステップ2|3年間(大学は4年間)鍼灸師としての専門知識と技術を学ぶ
学校では東洋医学の理論はもちろん、解剖学や生理学といった人体の構造・機能に関する基礎知識を学びます。鍼(はり)や灸(きゅう)の技術、ツボ(経穴)の知識を深め、臨床実習を通じて実践的な専門技術も習得していきます。
ステップ3|国家試験に合格し鍼灸師の免許を交付してもらう
養成施設を卒業すると、国家試験の受験資格が得られます。鍼灸師として働くために必要な資格ですので、過去問題や模擬試験でしっかり対策しましょう。
試験合格後、免許申請を行い「はり師」「きゅう師」の免許証が交付されれば、鍼灸師としての一歩を踏み出せます。
50代から鍼灸師を目指すメリットとデメリット
50代からのキャリアチェンジは大きな決断です。これまでの人生経験が強みになるというメリットがある一方、学費や体力的な負担といった現実的なデメリットも存在します。
ここでは、鍼灸師を目指す上でのメリットとデメリットを具体的に整理します。ご自身の状況と照らし合わせながら、判断材料としてご確認ください。
メリット
豊富な人生経験を活かせる
これまでの社会人経験は大きな強みです。仕事で培ったコミュニケーション力や課題解決スキルは、患者さんの悩みに寄り添う鍼灸の現場で直接役立ちます。
人生経験の豊富さが、患者さんとの信頼関係を築く上での基盤となるでしょう。
定年を気にせず多様な働き方ができる
鍼灸師は国家資格であり、定年がありません。独立開業すれば生涯現役で働けますし、訪問鍼灸や美容鍼灸など、活躍の分野が多様な点も魅力です。
鍼灸師という職業の需要が拡大
国内の高齢化(2040年には約35%が高齢者)に伴い、介護分野での鍼灸師の需要が高まっています。在宅医療で痛みを和らげたり、介護施設で利用者の生活の質(QOL)向上に貢献したりと、高齢者ケアの専門家として活躍の場は増えています。
また、鍼灸は、症状が現れてからの治療だけでなく、未病の段階で身体の調和を保ち、健康を持続させる予防医療としても大きく期待されています。
参考:日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要(国立社会保障・人口問題研究所)
デメリット
学費がかかる
社会人からの挑戦では、学費や生活費への不安が伴います。鍼灸師の学校の学費は、大学か専門学校かで異なりますが、一般的に3年間で平均350万~600万円程度が必要だといわれています。
奨学金や授業料の免除制度、雇用保険の「教育訓練給付制度」などを活用し、学びながら生計を立てていく工夫も検討しましょう。
体力面、精神面で大きな負担に感じる場合がある
鍼灸師の資格は通信教育では取得できず、必ず3年間は通学しなければなりません。日中働きながら夜間の学校に通う場合、疲れた状態での学習は体力的にも精神的にも厳しく感じる可能性があります。
また、若い学生と同じペースで学ぶことに負担を感じたり、記憶力や集中力の面で苦労したりするケースや、ご家族の理解と協力も必要になるでしょう。
鍼灸師の収入やキャリアパス
鍼灸師の資格を取得した後、「食べていけるのか」は一番の関心事でしょう。実際、鍼灸師の平均的な収入はどれくらいなのでしょうか。
50代からのスタートでも、働き方の選択肢は多様です。ここでは、治療院勤務から専門分野での活躍、独立開業まで、具体的な収入の目安とキャリアパスについて解説します。
鍼灸師の収入
鍼灸師の年収は、全国平均で430.2万円とされています。
この額は、特別高収入というわけではありませんが、鍼灸師としての経験を地道に積むことで、将来的には収入アップを目指せる可能性があります。
ただし、治療院などに勤める場合は給料制となることが一般的です。そのため、安定した収入が見込める一方で、急激な収入アップを実現するのは難しい側面もあります。
鍼灸・整骨院など治療院での勤務
鍼灸師の一般的な働き口は、鍼灸院や接骨院(整骨院)となります。鍼灸院では主に鍼(はり)とお灸(きゅう)を用いた施術を行い、接骨院では鍼灸に加えて柔道整復術による施術も行う点が特徴です。
業務の流れとしては、まず患者さんの症状をヒアリングし、身体の状態を診察します。その後、鍼やお灸を用いて、患部や「ツボ」と呼ばれる経穴(けいけつ)に刺激を与えていきます。1回あたりの施術時間は、30分から1時間程度が一般的です。
施術の合間には、患者さんへの生活指導やセルフケアのアドバイス、カルテの記入といった事務作業も行います。また、数は多くありませんが、鍼灸治療を積極的に取り入れている病院や診療所もあり、そうした医療機関で勤務する道もあります。
美容鍼灸やスポーツなどの専門分野で活躍
近年、鍼灸師のキャリアパスは多様化しており、特に美容鍼灸やスポーツ分野といった専門領域で活躍する鍼灸師が増えています。
美容鍼灸の分野では、シミ・シワ・くすみの改善、リフトアップによる小顔効果など、エイジングケアに対するアプローチが注目を集めています。その需要の高まりを受け、エステサロンと提携して施術を提供する鍼灸院も増加傾向にあります。また、美容という特性から、女性の鍼灸師の活躍も目立っています。
一方、スポーツ分野では、プロアスリートからアマチュア選手まで、選手の怪我の治療やコンディショニングを専門に担当する鍼灸師が活躍の場を広げています。
ご参考:美容鍼など、美容に関心のある方はこちらもご覧ください。
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独立開業
さらなる鍼灸師のキャリアパスとして、独立開業も有力な選択肢の一つです。開業の大きなメリットは、自分の理念に基づいた施術を追求できる点です。また、勤務時間や場所、休日もある程度融通が利くため、自身のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。
経営が軌道に乗れば、勤務時代以上の収入アップも期待できるでしょう。
ただし、開業を成功させるには、鍼灸の技術や知識だけでなく、集客や会計管理などの経営スキルも必須となります。
治療院の開業や経営についてはこちらの記事もご覧ください。
お役立ち情報 治療院集客/経営
まとめ
50代から鍼灸師を目指すことは、決して遅くありません。これまでの豊富な人生経験やコミュニケーション能力は、患者さんの悩みに寄り添う上で大きな強みとなるでしょう。
国家資格を取得すれば、定年を気にせず働けたり、独立開業や介護分野で活躍したりと、多様な道が選べます。もちろん、3年間の通学や国家試験の勉強、体力面など、乗り越えるべきハードルは存在します。しかし、それらを乗り越えた先には、生涯続けられる「やりがいのある仕事」が待っています。




































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