【書籍紹介】症状を「気の現れ」として捉え直す。腹診を軸に根源へ迫る独自の鍼灸体系『積聚治療 -気を動かし冷えを取る-』

医道の日本社では、最新の施術情報や関連知識の収集に努めている鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、アスレチックトレーナーや美容関係者・ヨガインストラクターの方などに役立つような書籍・DVDを多数取り扱っています。その中でも特にオススメの人気シリーズや、注目のタイトルなどをご紹介していきます。
症状の奥にある「気」を診る
患者さんが「肩がこる」「腰が痛い」と訴えるとき、治療家の皆さんはその症状をどう捉えているでしょうか。症状そのものを治療対象として直接アプローチするのか、それとも症状の背景にある身体全体の状態として読み解くのか。臨床の組み立て方は、ここから大きく分かれていきます。
そんな臨床上の感覚を、明確な理論として体系化したのが『積聚治療 -気を動かし冷えを取る-』です。
著者は、太子堂鍼灸院を開院し、積聚会を主宰した小林詔司氏。1976年から鍼灸学校の実技指導の中で生まれ、長い臨床経験を経て磨かれてきた独自の治療体系が、本書には記されています。今回はそんな本書の魅力をご紹介していきます。
✔️ 症状の奥にある共通の根源にアプローチしたい鍼灸師
✔️ 腹診を軸に、診察から治療までの一貫した流れを学びたい臨床家
✔️ 東洋医学の気・陰陽観を、実際の臨床手順に落とし込んで身につけたい施術者

「積聚治療」の概要
本書は、積聚治療の思想的な土台と実際の臨床手順を、前篇・後篇の二部構成でまとめた一冊です。
書名にもなっている「積聚(しゃくじゅ)」とは、『難経』55難に記された言葉。腹部に現れる気の滞りを意味し、本書ではこれを治療の中心的な指標として位置づけています。
著者が腹診に着目した背景には、鍼灸学校での実技教育がありました。脈診は習得に時間を要し、学生同士の実習では客観性も得にくい。そこで全身の状態を投影する場として、視ることも触ることもできる「腹部」へと目が向けられたのです。
前篇では気・陰陽観・人体観・病因・病症の診方といった基礎概念が整理され、後篇では腹診から背部治療、補助治療までの実技手順が段階的に解説されていきます。
第9章「臨床の実際」では下半身・上半身・全身の病症ごとに症例も収録。理論と臨床が一本の線でつながった構成が、この治療法の全体像を掴みやすくしてくれるでしょう。
収納コンテンツ
【前篇】積聚治療の基礎概念
1.積聚治療について
2.疾病観の基礎
3.人体観の基礎
4.病因
5.病症の診方
【後篇】積聚治療の実際
6.病態把握と治療1
7.病態把握と治療2
8.病態把握と治療3
9.臨床の実際
【付記】鍼灸の基本技術

腹部は全身を映す鏡
本書の第1章「積聚治療について」には、この治療法の本当の特徴が示されています。それは、患者さんに現れているさまざまな症状を、気の集まりとしてまるごと捉え、その視点から治療を組み立てていくという考え方です。
症状だけを見るのではなく、症状を「気の集合体」として読み直す。この視点を持てるかどうかが、積聚治療の核といえるでしょう。
そして病の究極の原因は、先天的・後天的なさまざまな要因から生じる「生命力の低下」、すなわち根源的な冷えにあるとされます。治療とは、気を動かし、この冷えを解消する行為。頭痛も、肩の不調も、下腹部の違和感も、行き着く先は同じ場所だ、という見方が積聚治療の根幹を支えています。
この一貫した視点を持てるようになると、訴えの異なる患者さんに対しても、向き合うべき対象が一つに絞られていきます。
腹で診て背で治す、五行に沿った治療手順
積聚治療の臨床手順は、明確な順序で組み立てられています。
まず接触鍼で身体を整え、脈を調整したうえで腹診を行います。腹部は心窩部から下腹まで五行に区分され、どの領域に積が現れているかによって五種の腹証、つまり心虚証・脾虚証・腎虚証・肝虚証・肺虚証のいずれかが立てられる流れです。
腹証が決まれば、次は背部での治療です。
背部もまた胸椎・腰椎を基準に五行で区分されており、腹証に対応した順序で兪穴へと刺鍼が進んでいきます。
たとえば、心虚証であれば「木の領域→火の領域→金の領域→水の領域」というように、五行の相生・相剋の関係を踏まえた選穴が行われる仕組み。
さらに必要に応じて手足の経穴や募穴を用いた補助治療が加えられ、気の巡りを整えていきます。
技術面では、寸3-3番の銀鍼を用い、鍼管を使わない押入法を理想とするとされています。患者さんの皮膚が開くのを待ち、抵抗に逆らわず素直に刺入する。鍼そのものよりも、指標を読み、気を動かすという視点が一貫して貫かれているのが、本書の臨床手順の大きな特徴と言えるでしょう。

「積聚治療」まとめ
・腹部の五行区分から、五種の腹証を立てる方法がわかる
・腹診から背部治療まで、明確な手順で臨床に活かせる
症状の奥にある「気」を読み、根源にある冷えを取り除く。
腹で診て背で治すという積聚治療の体系が、一冊にまとまっています。
臨床に確かな軸を持ちたい施術者にこそ
手に取ってほしい一冊です。
ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。

































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