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第44回東洋療法学校協会学術大会レポート

公開日:2023年11月2日

 第44回公益社団法人東洋療法学校協会学術大会が10月13日(金)大阪府吹田市文化会館メイシアターにて開催された。「イマジネーションを広げよう!~鍼灸とICT-教育DX、その先へ-~」をテーマに掲げ、コロナの影響により、ハイブリッド形式や完全オンライン型といった体制を敷いてきた本大会も、4年ぶりの対面形式となる通常開催となった。今大会では、全国学校協会加盟校47校の学1,300名が会場に駆けつけた。

開会式

開会式にて挨拶をする公益社団法人東洋療法学校協会会長の清水尚道氏
来賓として臨席した公益社団法人全日本鍼灸学会会長の若山育郎氏

 開会式にて、会長の清水尚道氏より、3年間は通常の開催をしていなかったため、今大会が初めての学術大会として参加した学生が多く、発表者も質問者も学生のため、難しく考えず疑問に思ったことは質問にチャレンジし、学生同士でいいものをつくりあげてほしいと述べた。続けて、公益財団法人東洋療法研修試験財団理事長の奈良信雄氏より寄せられた祝辞にて、同財団事務局長の川端岳郎氏が代わりに読み上げた。オンライン授業で使うデジタル教材は学習の効率化、さらにその先の未来につながるトランスフォーメーションの可能性のために急務と伝えた。公益社団法人全日本鍼灸学会会長の若山育郎氏は、壇上にて全日本鍼灸学会も知っていただきたい、と参加を促した。最後に、大会の成果、国民の健康の維持、向上に活かされることを願うといった厚生労働省医政局長、浅沼一成氏の祝辞が代読された。

 開会式後は、口頭発表全15題、ポスター発表全16題が行われた。

口頭発表①

演題1

「運動前の鍼通電刺激およびストレッチが遅発性筋痛に及ぼす影響」

盛岡医療大学校

演題2

「腹部筋緊張に及ぼす打鍼の効果」

東洋鍼灸専門学校

演題3

「頭部指圧・測定部指圧による前屈機能の変化について」

日本指圧専門学校

演題4

「足部への灸施術による足部機能の変化」

履正社国際医療スポーツ専門学校

演題5

「陽陵泉への円皮鍼刺激がゴルフスイングに与える影響」

四国医療専門学校

口頭発表②

演題6

「三陰交への台座灸による温熱刺激がストレス軽減にもたらす影響について」

東京医療福祉専門学校

演題7

「東洋医学から読み解く副腎疲労」

呉竹鍼灸柔整専門学校

演題8

「鍼施術によるストレス値の変化について」

大阪行岡医療専門学校長柄校

演題9

「鍼通電とTENSによる自律神経への影響に関する検討」

明治東洋医学院専門学校

演題10

「身柱穴への灸刺激が及ぼす心身への影響について」

森ノ宮医療学園専門学校

口頭発表③

演題11

「あん摩における手拳叩打音の好感度調査と音の出し方の研究」

呉竹医療専門学校

演題12

「オノマトペによる痛覚の変化」

東京医療専門学校

演題13

「あはき施術における医療面接の在り方」

京都仏限鍼灸理療専門学校

演題14

「【円皮鍼】セルフケアで目の疲れはとれるのか?」

関西医療学園専門学校

演題15

「視力改善に対する鍼と灸の比較」

大阪医療技術学園専門学校

ポスター発表

演題16

「廉泉穴への円皮鍼貼付が唾液中分泌型IgA及び舌圧に及ぼす影響」

北海道鍼灸専門学校

演題17

「粒鍼刺激と材質による疲労度軽減の検証」

仙台赤門医療専門学校

演題18

「経穴認知を可能にする身体操作法の構築に向けて」

日本鍼灸理療専門学校

演題19

「足底叩打刺激法が循環器系に及ぼす影響(第3報)」

長生学園

演題20

「超音波画像診断装置を用いた総腓骨神経の観察予備的研究」

国際鍼灸専門学校

演題21

「はり師・きゅう師国家試験の出題経穴と臨床でよく使われる経穴の比較検討」

日本医学柔整鍼灸専門学校

演題22

「鍼刺激が脳波に与える影響について」

日本健康医療専門学校

演題23

「台座灸を用いての施術による手の三陰原穴の温度変化について」

専門学校浜松医療学院

演題24

「月経痛の弁証と五味との関連について」

専門学校浜松医療学院

演題25

「鍼刺激が皮下出血に及ぼす影響」

専門学校中央医療健康大学校

演題26

「台座灸刺激が眼精疲労に与える効果」

中和医療専門学校

演題27

「あはき施術による足部血流速度の変化について―超音波診断装置を用いて―」

大阪行岡医療専門学校長柄校

演題28

「【耳介円皮鍼】女性の排便状況改善に対するセルフケア【三陰交灸】」

関西医療学園専門学校

演題29

「“女性の排便状況”と“東洋医学的病症”の関係を分析してみた」

関西医療学園専門学校

演題30

「灸の施術方法の違いによる効果の比較 ―3種の施灸法による肩こりへのアプローチ―」

森ノ宮医療学園専門学校

演題31

「失眠穴への施灸が睡眠に及ぼす影響」

福岡医療専門学校

レセプションホールにて、ポスター発表の様子
2階大ホール・ホワイエにて業者による展示販売会が設置された。常に学生らが途絶えることなく、その盛況ぶりが伺えた

特別講演・公開講座

 本学術大会のメインイベントとして、「未来の鍼灸には何が必要か~デジタル時代の新しいメディカルヘルスケアのあり方~」と題し、明治国際医療大学鍼灸学部学部長・鍼灸臨床部長・大学院鍼灸学研究科研究科長の伊藤和憲氏を講師に迎えての特別講演・公開講座が開催された。

 伊藤氏は、現在鍼灸師が置かれている状況や課題から整理し、分かりやすくスライド上でイメージ図を共有しながらどのように変わっていく必要があるかを指標し、これからの鍼灸師にとってビッグデータの構築、アプリを利用したいつでもどこでも誰でも簡単に健康管理が行える仕組み、考える電子カルテ、健康=文化といったキーワードを用いて講義を展開。医療費が逼迫している現在は、医療は治療から予防へシフトしていくことが予想されるため、鍼灸、整骨院は治療のみではなく、地域の健康を考えた養生つまり予防医学の確立が求められる。そのためには個人ではなく、行政や企業を巻き込んだ地域全体を社会的処方が必要不可欠であり、新しいプラットホームを創造していくことが重要とまとめた。

特別講演・公開講座で登壇した伊藤和憲氏。健康観と文化は直結するとし、例えば、自身の子どもの頃に風邪をひいて、のどに痛みがあるとネギを巻いたといったエピソードを紹介。鍼灸治療の未来をイメージするといった講演にふさわしい資料に富んだスライド供覧で、受講者にイメージしやすいよう視覚的に訴えた

閉会式

 閉会式では、運営委員長の楠本高紀氏より挨拶の後、研究発表者へ各賞の表彰状の授与が行われた。最後に、当協会副会長武田大輔氏の開会の辞にて今大会は閉幕した。その後レセプションホールにて、懇親会が開かれた。

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