【書籍紹介記事】世界中の手技療法家が注目するメソッド初の症例集!「筋膜機能障害へのファシャル・マニピュレーション」

医道の日本社では、最新の施術情報や関連知識の収集に努めている鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、アスレチックトレーナーや美容関係者・ヨガインストラクターの方などに役立つような書籍・DVDを多数取り扱っています。その中でも特にオススメの人気シリーズや、注目のタイトルなどをご紹介していきます。
目次
近年新たなエビデンスとともに注目が高まる筋膜へのアプローチ
長い間、あまり重要ではなく、単に受動的な組織といわれてきた筋膜。
しかし、近年その考えは大きく変わり、世界中の手技療法家の関心の的となっています。
そこでおすすめの一冊がこちら、「筋膜機能障害へのファシャル・マニピュレーション」です。
新たな生体力学モデルで筋膜にアプローチし、劇的な効果をあげる注目のメソッドFM初の症例集について紹介していきます。
✔️ 最新の筋膜研究に基づいた治療法に興味がある人
✔️ 今の治療法に行き詰まりを感じている人
✔️ 一流の手技療法家たちの症例から学びたい人
「筋膜機能障害へのファシャル・マニピュレーション」の概要
この筋膜アプローチで、世界中の手技療法家が評価・施術の限界突破!
Fascial Manipulation-Stecco method(ファシャル・マニピュレーション-ステッコメソッド、 FM)は、イタリア人理学療法士のLuigi Stecco氏が提唱する新たな生体力学モデルと、それを裏付けるfascia(ファシア)に関する解剖学的・生理学的エビデンスに基づく徒手的治療法であり、世界中の多くの臨床家に支持されています。
FMは、治療コンセプトにとどまらず、特に既往歴を重視する問診の手順、具体的な評価と治療の方法、治療戦略の立て方までが確立されており、筋骨格系機能障害および内部機能障害を理解し治療するための革新的かつ具体的な道すじを提案しています。
本書は、FMでは初となる症例報告集です。本書を編集したFMの上級ティーチャーであるJulie Ann Day氏は、世界各国のFMのティーチャーや、FMの研修コースに参加した他の治療手技にも精通するセラピストに執筆を依頼して本書を完成させました。
これまでの臨床経験をすべて覆すものではなく、深みを与え活かしてくれる全く新しい切り口であるFMという視点で、様々な手技療法の専門家による臨床現場での実践症例を豊富な考察と共にまとめています。
全体を俯瞰して患者の体の中で起った深筋膜や浅筋膜の高密度化ないし変性が、筋肉や内部臓器にいかなる機能障害をもたらしているかを探り出し、症状に対する従来のアプローチでは改善が見られなかった症例も、随伴症状とともに一網打尽にしていく思考過程も詳しく解説しています。
すでにFMを学んだことのある治療家には、大いに参考にしていただくことができるでしょう。本書の前付にはFMの歴史や理論、実践方法が概説されているため、FMを学びはじめるきっかけにもおすすめの1冊です!
収納コンテンツ
監訳者のことば
謝辞
寄稿者一覧
巻頭言
序文
用語解説
はじめに
第1章 筋骨格系機能障害
1. 女性アスリートの腰痛治療
著:マルコ・ブランチーニ Marco Branchini
2. 足部から反対側肩部へ広がる機能障害の治療
著:竹井仁Hitoshi Takei
3. ストリートファイター、元プロボクサー、ベトナム帰還兵の治療ー複雑な症例
著:ステファン F.オズワルド Stephen F. Oswald
4. 若年性関節炎患者における顎関節機能障害の治療
著:アンジェラ・マッケンジー Angela Mackenzie
5. このメソッドは魔法だろうか?もちろん魔法ではないー3つの症例報告ー
著:エラン・マンジェル Eran Mangel
第2章 内部機能障害
6. 筋骨格系の緊張による代償から内部機能障害に……あるいはその逆?
著:アンドレア・ハンーニ Andrea Pasini/ロレンツォ・フレスキ Lorenzo Freschi
7. 自動車事故後の慢性的な頸部痛に対する治療
著:シェリル・メガロス Cheryl Megalos
8. プロの音楽家における胸郭出口症候群と反復性運動過多損傷の治療
著:ティナ・ラーティネンースオパンキ Tiina Lahtinen-Suopanki
9. 慢性多尿症治療におけるFascial Manipulation for Internal Dysfunction (FMID)
著:ヤロスロー・チチョムスキー Jaroslaw Ciechomski
10. 乳頭温存乳房切除術後の部分乳頭虚血性壊死の解消
著:ナタリー・ブレットラーNatalie Brettler
11. ベル麻痺の治療
著:ラリー・スタインベックLarry Steinbeck
12. ランナーの分娩後尿失禁の管理における内部機能障害に対するFascial Manipulation(FMID)
著:コリーン・ホワイトフォード Colleen Whiteford
第3章 その他の視点
13. 機能的ポイントと病理的ポイントを区別する:治療の修正の可能性
著:ウォーレン.I.ハンマー Warren I. Hammer
14. 慢性頸部痛患者における3回の治療後の姿勢の変化
著:ロレンツォ・コペッティ Lorenzo Copetti
15. 中枢神経系の小児患者に対する治療
著:ニタ・トルヴァネン Nita Tolvanen
おわりに
索引
筋膜へのアプローチで注目を集めるFMとは?
FMは、イタリア人理学療法士のルイジ・ステッコ氏によって開発された、筋膜マニピュレーションのメソッドです。
全身の筋膜システムがどのように機能して、身体全体の安定性と張力バランスを確保するか。
新たな生体力学モデルとエビデンスに基づき確立された治療体系が特徴です。
張力が交差する点の筋膜が、臨床的に “高密度化”と呼ばれる変化を受けやすいことに着目。
その高密度化したポイントに深部摩擦を加えることで、疼痛が大幅に軽減し、運動を劇的に改善させるのです。
驚きなのは、筋骨格系の障害だけでなく、内部機能障害にもアプローチできること。
ステッコ氏の著書は、今や11カ国語に翻訳され、理学療法、カイロプラクティック、医療など、さまざまな手技療法の専門家によって採用されています。
また、患者の既往歴すべてを参考に評価していく方法もFMの大きな特徴。
どれだけ過去の出来事でも、また症状のある部分と離れていたとしても、私たちの身体の中で影響を与えていると考えます。
本書では、踵部の痛みが骨盤内の卵巣嚢腫に関連していた症例や、乳児期のエピソードが現在の症状に影響を与えていた症例などが紹介されています。
そして、FMの特徴は、なんといってもその劇的な治療効果です。
それまでなかなかよくならなかった慢性的な機能不全も、短期間で改善できるFM。
その効果を実感し、取り入れずにはいられなくなる手技療法家が続出している注目のメソッドなのです。

経験豊富な手技療法家による症例報告には臨床のヒントが満載
本書のもう一つの特徴は、症例報告者が、理学療法士、カイロプラクティック医師など皆、それぞれの分野で成功し、活躍している経験豊富な手技療法家であることです。
過去の既往歴を詳細に問診し、検査、触診、仮説を立てて治療し、原因を突き止めていくそのプロセス。
百戦錬磨の専門家たちによる症例は読み応えがあり、臨床のヒントにあふれています。
印象的なのは、報告者たちの多くが同じような言葉を述べていることです。
FMに出会う前の治療では、
「何かが足りない、治療しきれていない」
という感覚があったと語る彼ら。
それが、FMを取り入れることで、変化していく様子が記録され、
「全体像がみえるようになった」と彼らはいいます。
そして、今までどんな治療をしても良くならなかった患者たちが、FMによって改善し、人生に希望と笑顔を取り戻していく姿。
それが臨床家たちにモチベーションを与えていることが伝わってきます。
FMのモットーである「知識ある手は強力」という言葉。
セラピストの手が科学的知識に支えられるほどに、その治療はより効果的であることを意味しています。
臨床家たちの好奇心を刺激し、さらなる学びへの情熱を掻き立ててくれる一冊です。

「筋膜機能障害へのファシャル・マニピュレーション」まとめ
・筋膜に着目した新たな生体力学モデルに基づいたFMについて知ることができる
・経験豊富な手技療法家たちによる症例報告は読み応えあり
近年、ますます注目を集める筋膜に着目し、劇的な治療効果を発揮するFM初の症例集。
よりよい治療を求めて学び続ける臨床家必読の一冊です。
ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。