「医道の日本」プレイバック!(3)
キム・ボンハン学説(1961年~)
目次
『キム・ボンハン学説』
鍼灸医学の根幹はいわずと知れた経絡・経穴。これらは眼にみえないが、「確かに実在する」という前提のもとに古来より鍼灸治療が行われてきた。
ところが、1961年、朝鮮民主主義人民共和国・平壌大学教授であるキム・ボンハン(金鳳漢)博士による論文『経絡の実態に関する研究』が業界に大きな波紋を投げかけることとなった。
キム・ボンハン(金鳳漢)博士は論文のなかで「経絡の(解剖学的)実態を確認した」と発表。
博士のこの論文と63年の『経絡系統に関する研究』、65年発表の『経絡体系』、『サンアル学説』などの一連の研究は「キム・ボンハン学説」と総称され、斯界に大論争を巻き起こした。
当時キム・ボンハン学説研究の最前線にあった藤原知氏が本誌に連載した「キム・ボンハン学説入門」によると、経絡系統とは、血管系・神経系とは別の解剖組織学的な存在であり、生体内で客観的にみられるものだという。そしてその実態は、「ボンハン小体とそれを連結するボンハン管より構成されている」と説明している。
さらに、この学説をめぐる論争に拍車をかけたのが、朝鮮民主主義人民共和国で作成された「経絡の世界」と題された約50分の科学映画。この映画は1966年10月に新日本医師協会とキム・ボンハン学説研究会の共催にて日本で初上映され、その後は小社が中心となって上映会が数回開催された。画面にはボンハン小体およびボンハン管(とされる物体)が剖出される様子が映っており、その生々しい様子に多くの業界関係者が大きな衝撃を受けた。
その後、キム・ボンハン学説は目立った成果も現れずしだいに下火となったが、2000年代に入り、韓国のソウル国立大学などで本格的な再検討がなされつつあるという(『医道の日本』2005年5月号口絵参照)。
今回、紹介するのは、キム・ボンハン博士の偉業を称え同国で発行された記念切手を公開した口絵記事と、小社主催の「経絡の世界」上映会の様子を伝える口絵記事、そして当時業界の中心にあった丸山昌朗氏と井上恵理氏によるこの映画の感想である。
業界に波紋を投げかけ、今も語り草となる異端の学説、キム・ボンハン学説にプレイバック――。
「キム・ボンハン学説」関連記事 PDFファイル
※PDFファイルを開くには、無償で提供されているAdobe Readerが必要です。