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最近よく聞く、鍼灸って何?

公開日:2023年12月26日
博士おや、「はりクマ」君じゃないか、めずらしい。
研究室に何か用事かね。
はりクマ最近、僕の周りでは肩こりなんかで鍼灸院に通い始めるOLさんが増えています。
鍼灸って何ですか。
博士専門家は鍼灸のことを「しんきゅう」と呼ぶけど、鍼(はり)と灸(きゅう)のことなんだ。
鍼(はり)と灸(きゅう)は東洋医学の一分野で、身体の痛みや不調を改善する治療法のことだよ。
はりクマ不調を改善する2つの方法があるということ?
博士そうなんだ。
鍼(はり)は特殊な鍼を皮膚に刺したり、触れたりして、身体の働きを整えるよ。
鍼と言っても、注射針とは違うよ。注射針や裁縫用の針よりももっと細くて、成人の毛髪くらい。しかも先端は特殊な角度になっている。だから、刺しても痛くないんだ!
はりクマ痛くないって、すごいですね。
博士一方、灸(きゅう)は、もぐさなどを燃やし、皮膚の上で温熱刺激を与える方法じゃ。
はりクマええ?!皮膚の上で燃やすんですか?やけどしないかな…
博士熱いってイメージがあるけど、誤解されている面があるね。熱い灸をすえることも1つの方法だけど、それ以外に鍼灸院で受けられる灸には様々なタイプがあるんだ。
はりクマえ?灸に種類があるんですね。
博士灸は皮膚に直接すえるものと、間接的にすえるものとに大別される。直接すえる際は、米粒以下のものを使って、もぐさが燃えきる寸前に新しい灸に取りかえられるスタイルが主流となっているんだ。間接的にすえる際には燃えるもぐさと皮膚との間に、灸点紙という専用の紙やにんにくや生姜なんかを敷くこともある。だから、「熱い」というよりは、じんわりと温かくて気持ちがいい。それがお灸なんだよ。
はりクマへぇ!僕、なんだか鍼灸に興味がわいてきましたよ。
博士よし!では、もう少し詳しく鍼灸について見ていこうか。
はりクマはい、お願いします!

鍼灸とは?歴史や治療の流れ、保険適用までわかりやすく解説

「鍼灸」は、病気や身体の不調を改善を目的として、多くの治療院で利用されている有名な施術方法のひとつです。しかし、鍼灸が具体的にどのようなものなのか、実はよく知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、鍼灸について、歴史や治療方法、鍼灸院について詳しく解説します。

鍼灸とは

鍼灸とは、東洋医学の一分野で、身体の痛みや不調を改善する治療法です。主に鍼(はり)と灸(きゅう)の2つの方法があります。

鍼治療は、鍼と呼ばれる特殊な細長い金属を皮膚に刺すことで、身体の働きを整える狙いがあります。

鍼を刺すのは、痛みを感じる箇所や、経絡と呼ばれる特定の経路に沿った経穴(ツボ)です。これらの箇所に鍼で刺激を与えることで、血行が良くなったり筋肉が緩んだりし、症状の軽減が期待できるのです。

一方の灸治療は、植物から作られたもぐさを燃やし、皮膚の上で温熱刺激を与える方法です。灸の温熱刺激によって、血行の促進や、免疫力を高める効果が期待できます。

鍼灸は古くから伝わる伝統医療で、WHO(世界保健機関)でも注目されている医療のひとつです(※)。鍼灸を現代医学と組み合わせることで、慢性的な痛みやストレスによる症状の緩和に役立つと考えられています。

※WHOでは、鍼灸の有効性について注目はしているものの、現段階で明確な効果を認めている訳ではない点はご留意ください

ただしこれらの効果が得られるのは、あくまで専門的な知識を持った鍼灸師による適切な施術を受けた場合です。「はり師」「きゅう師」は国家資格が必要な職業であり、素人が安易に自宅で真似するのは非常に危険ですのでご注意ください。

鍼灸の歴史

鍼灸の歴史は、古代中国から始まります。中国医学における三大古典のひとつで、中国最古の医学書とされる「黄帝内経」に、鍼灸に関する記載があります。はるか紀元前に編纂された文献に、鍼灸を用いた治療が記されており、鍼灸医学の歴史は2,000年以上です。

中国から日本に鍼灸が伝わったのは、奈良時代の頃とされています。その後、平安時代には貴族たちの間でも鍼灸を用いた治療が行われるようになりました。さらに江戸時代に入ると、庶民にも鍼灸が広まり、さまざまな病気の治療に活用されるようになりました。

現代では、世界各国で鍼灸による治療が行われています。東洋の伝統医療の枠に留まらず、西洋医学との融合も模索されるなど、現代医学としてのさらなる発展が期待されています。

鍼灸院とは

鍼灸院とは、鍼灸による施術を行う治療院を指します。鍼灸を用いた治療を専門とする治療院もあれば、整体と組み合わせた治療を行うところも多く、後者は「鍼灸整体院」と呼ばれることが多いです。

これ以外にも、内科・婦人科・整形外科といった医療クリニックで、治療の一環として鍼灸施術を行うケースがあります。

鍼灸専門の治療院以外でも、鍼灸を用いた施術は浸透しているのです。

鍼灸師の資格について

鍼灸師に必要な資格には、鍼治療に必要な「はり師」と、灸治療に必要な「きゅう師」という2つの国家資格があります。

「はり師」と「きゅう師」はそれぞれ別の資格であり(※)、両方の資格を取得した場合のみ「鍼灸師」を名乗ることが可能です。

これらの国家資格を取得するためには、年に一回実施される国家試験に合格しなければなりません。

また、試験の受験資格を得るためには、まずは文部科学大臣・厚生労働大臣・都道府県知事のいずれかの認定を受けた学校で、3年以上知識や技術を学習することが必須となります。

※「はり師」と「きゅう師」の試験を同時に受験することもできます。

鍼灸院の治療の流れ

鍼灸院で治療を受ける際は、一般的なクリニックと同様に、まずは受付をしたあと、症状についての診察や問診を行います。そのうえで、症状の改善に必要な方法が鍼なのか灸なのかを判断し、施術へと移ります。

鍼治療

鍼治療は、鍼(はり)を用いて体の不調を改善する治療法です。鍼は一般的にステンレス製で、長さは数ミリメートルから数センチメートルまでさまざまなものがあります。

鍼治療は、痛みを感じる部位や、経穴(ツボ)と呼ばれる特定のポイントに鍼を刺します。鍼の刺激が血行の改善や筋肉の緩和に働きかけることで、痛みや不調の軽減を目指すのです。

鍼治療を受ける際は、痛みを心配される方が多いと思います。しかし、一般に鍼治療は痛みが少ないとされています。鍼治療で使用する鍼は非常に細く、皮膚に刺す際の痛みはほとんど感じられないことが多いからです。

ただし、施術者の技術や患者の状態によっては、若干の痛みを感じることもあります。

また、鍼治療の効果が現れるまでの時間は個人差が大きく、一度の施術で効果が現れることもあれば、数回の治療が必要な場合もあります。症状や体質によって効果が現れるまでの時間は異なるため、治療を受ける際には鍼師や鍼灸師と相談し、適切な治療計画を立てることが重要です。

鍼治療の本来の目的は、人が持つ自然治癒力を引き出すことです。そのため即効性はなく、長期的な施術による効果を期待するのが良いでしょう。

灸治療

灸治療は、もぐさを燃やして温熱刺激を与えることで、身体の不調を改善する治療法です。もぐさは、ヨモギの葉の裏にある白い毛の「腺毛」を精製して作られます。

灸の種類には、お灸を直接肌に置く「直接灸」や、肌の上に台座となるものを置くことでお灸との間に隔たりを持たせる「間接灸」、温熱刺激を緩やかに与える「温灸」などがあります。これらは、治療の目的や施術する箇所によって使い分けられます。

灸治療は、経穴(ツボ)や痛みを感じる部位にお灸を置き、身体の働きを整えることが目的です。お灸の熱が筋肉や経絡に働きかけることで、血行の改善や疲労回復を促す、免疫力を向上するといった効果が期待できます。

灸治療で利用する灸は熱さを感じるものの、苦痛をともなうほどではありません。適切な温度で行われる灸治療は、痛みを感じることなくリラックスして受けられることが多いでしょう。ただし、感じ方には個人差がありますので、注意が必要です。

灸治療の効果が出るまでの時間は、鍼治療の場合と同様に個人差があり、症状・体質によっても異なります。必ずしも一度の治療で症状が改善されるとは限らないので、施術者と相談しながら治療を進めていきましょう。

鍼灸院での治療に保険は使える?

鍼灸院で治療を受ける際、健康保険が使えるかどうかを気にされる方も多いでしょう。

以下に当てはまるケースでは、健康保険を利用して治療を受けられます。

  • 神経痛
  • リウマチ
  • 腰痛症
  • 五十肩
  • 頚腕症候群
  • 頚椎捻挫後遺症
  • その他類似する疾患

ただし、鍼灸院で治療を受ける前に、まずは医療機関で医師の同意を受ける必要があります。医療機関で治療を行っても効果が現れず、医師が鍼灸の施術を受けることを認めて同意書を発行した場合のみ、健康保険が適用されます。

そのため、医療機関での治療と併行して鍼灸院で治療を受けるケース(医師の同意がない場合)や、美容目的の場合は健康保険を利用できません。

まとめ

鍼灸は我々日本人にとって、比較的馴染みのある治療法のひとつです。鍼灸は非常に長い歴史を持つ治療法であり、世界でも注目されています。

鍼灸は経穴(ツボ)に刺激を与えることで自然治癒力を高め、通常の医療では改善できなかった症状に効果が期待される治療法です。

こうしたことから、医療クリニックでも、鍼灸を用いた治療を行うケースが少なくありません。

ただし、その効果を実感するには、長期的な治療が必要となる場合もあるため、施術者としっかり相談したうえで施術計画を立てましょう。

また、鍼灸院では健康保険を使える場合と使えない場合があります。

健康保険が使えない場合は、通常の医療機関での診療に比べて費用が高くなる傾向があるので、健康保険の利用可否や施術費用についてもあらかじめ確認しておきましょう。

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監修

学校法人 花田学園
日本鍼灸理療専門学校 教務部長 小川 一 先生