いま話題のフェムテックとは?注目される理由や製品・サービスまで解説

女性特有の健康課題をテクノロジーで支援するフェムテックは、SNSやAI技術の発展、企業福利厚生への導入拡大などを背景に急速に注目を集めています。
今回は、フェムテックの基本知識や注目される背景に加え、生理管理や妊活サポート、オンライン診療、ウェアラブル機器、更年期ケアなど、多彩な製品・サービスをわかりやすく紹介します。
フェムテックについてご興味をお持ちの方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
フェムテックとは
Femtech(フェムテック)とは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。生理・月経管理、不妊・妊よう性支援、妊娠期・産後ケア、プレ更年期・更年期サポートなど、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指します。
これまで「相談しにくい」「我慢しがち」とされてきた悩みを可視化し、月経周期アプリや排卵予測キット、オンライン診療、AIなどによる症状分析などを通じて、専門家との連携やセルフケアを支援します。
いまフェムテックが注目される理由
近年フェムテックが注目されるようになった背景には、さまざまな理由があります。ここでは、その主な理由を4つ紹介します。
女性の社会進出によって女性特有のお悩み解決が必須の時代になった
女性の社会進出が進んでいますが、生理痛や更年期障害など女性特有の健康課題を抱えたままでは、職場で最大限の力を発揮できません。
経済産業省の試算によると、こうした課題による社会全体の経済損失は年間約3.4兆円に達するとされ、フェムテックによる解決が社会全体のプラスに働くと認識されるようになっています。
参考:女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について(令和6年2月 経済産業省 ヘルスケア産業課)
テクノロジーが進歩した
ビッグデータやAI、IoTなどの技術進歩により、これまで手動管理だった基礎体温や生理日データを、アプリ入力だけで精密に分析し、次回の生理日や排卵日を予測して自動通知してくれるようになりました。
さらに、オンライン診療やチャット相談機能を備えたアプリ・デバイスの開発が進み、忙しいときでも専門家に気軽に相談でき、個々の状況に合わせたヘルスケア支援が可能になっています。
SNSの普及によりタブー視されにくい環境ができた
InstagramやX(旧Twitter)などSNSの普及により、生理痛や更年期など女性特有の健康課題について情報を発信・共有する場が増えています。
これまで「話しづらい」とされてきた悩みも、オンラインコミュニティや投稿を通じて自然に語られ、当事者同士が支え合える環境が整いました。
こうした動きにより、これまでタブー視されていた女性特有の悩みが社会的課題へと押し上げられ、フェムテックへの注目が一層高まるに至りました。
企業が福利厚生として導入するケースが急増している
近年、多くの企業が福利厚生の一環としてフェムテックを導入しています。産業医と連携した妊活や病院選びの相談サービス、生理痛・更年期障害に関する全社研修・セミナー開催など、職員の理解を深める取り組みが進んでいます。
また、検査や治療費の補助制度を整備し、妊娠・出産期でも継続して働きやすい環境づくりが進められていることも、フェムテックが注目されている背景のひとつといえるでしょう。
フェムテックで対応できること
女性のライフステージや体調は人それぞれですが、フェムテックなら生理管理や妊活・産後ケア、更年期サポート、婦人科疾患対策、セクシャルウェルネスまで、多彩な悩みに応じた製品・サービスが揃っています。
ここからは、具体的に各分野でどんなツールやサポートが受けられるのかをわかりやすく紹介します。
フェムテックで対応できること
生理(月経)
生理には個人差があり、生理痛やPMS(月経前症候群)によって日常生活や仕事に支障をきたす場合があります。
妊活・妊娠・産後ケア
不妊治療と仕事の両立が難しく、妊娠中は「むくみ」や「つわり」などの体調不良に悩むケースが多く見られます。
産後は性ホルモンの変動によりイライラや気分の落ち込み、ほてり・動悸・息切れなどの身体不調が現れ、精神的・肉体的負担を抱える女性も少なくありません。
更年期
更年期(45~55歳頃)では、ほてり・発汗・疲労感・頭痛・尿もれなどの身体症状に加え、憂うつ感・イライラ・不眠などの精神症状が現れます。
こうしたホルモンバランスの変化が引き起こす多様な不調が、日常生活や仕事に影響を与えます。
婦人科系疾患
乳がんや子宮頸がんなどの悪性腫瘍、子宮内膜症や子宮筋腫などの良性疾患への罹患や、定期検診・治療に伴う痛みや副作用、将来の妊娠への不安など、多岐にわたる身体的・精神的リスクが女性の大きな悩みになっています。
セクシャルウェルネス
性に関する身体的な悩み(性交痛や膣の乾燥、性感度の低下)や、性への心理的・感情的な不安(性に関する情報不足や自己肯定感の低さ)、パートナーとのコミュニケーションギャップなど、性の幸福を妨げる多様な課題が挙げられます。
女性特有の悩みを解決するフェムテック製品やサービス
生理用品
ナプキン不要でショーツそのものが経血を吸収してくれる吸水ショーツは、従来のナプキンに比べてモレや肌トラブルを軽減してくれます。また、近年注目を集めている月経カップは、煮沸消毒により繰り返し使えることから、エコにも配慮されています。
スマホアプリ
スマホアプリでは、基礎体温や生理日を入力するだけで次回の生理日・排卵日を自動予測し通知してくれます。
さらに、PMS(月経前症候群)期の気分や症状を記録し、適切な対策アドバイスをオンデマンドで提示。さらに睡眠・ストレス管理機能も備え、スマホひとつで多面的に健康をサポートします。
また、アプリやWebによるオンライン診療を通じて、低用量ピルを処方してもらえるサービスも増えています。自宅からオンラインで受診できるため、婦人科受診が困難な方も手軽に利用できます。
ウェアラブルデバイス
ウェアラブルデバイスは、皮膚接触式の基礎体温センサーやスマートウォッチで体温や心拍数をリアルタイムに測定し、アプリと連携して生理周期を把握できます。
また、運動量や睡眠をモニタリングする機能により、ホルモン変動に合わせた運動プランやセルフケアをサポートし、女性の健康管理をより精密に行えます。
その他
温活グッズで冷え対策、サプリメントで栄養補給、骨盤ケアデバイスで筋力強化、膣内環境チェックキットでセルフモニタリング、痛み軽減の乳がん検査や性交痛緩和の潤滑ジェルなど、幅広いフェムテック製品が女性の悩みをサポートします。
日本でも広がるフェムテック
世界のフェムテック市場は急成長しており、経済産業省の報告によると、2023年の収益は約12億ドル、2033年には約50億ドルに達すると予想されています。
また、市場規模は2025年に約500億ドル規模にまで拡大すると言及されており、半数以上を米国企業が占め、次いでイスラエル、英国企業が続いています。
今後はBtoCに加え、BtoBや福利厚生分野での導入も増える見込みです。
一方、日本では2025年のフェムテックによる経済効果が年間約2兆円に達すると推計され、なかでも「妊娠・不妊分野」がもっとも高い経済効果を生むとされています。
経済産業省は女性の就業継続支援や補助金交付を積極的に実施しており、今後も国内外の参入増加や社会的理解の深化により市場拡大が期待されています。
参考:令和2年度産業経済研究委託事業 働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本与える効果と課題に関する調査報告書(株式会社日立コンサルティング)
まとめ
女性特有の健康課題をテクノロジーで支援するフェムテックは、AIやIoTの進化、SNSでの情報共有、企業福利厚生導入の広がりを背景に注目されています。
生理管理アプリや妊活サポート、オンライン診療、ウェアラブル機器など多彩な製品・サービスが、月経から妊娠・更年期まで幅広くケアし、女性の安心・働きやすい社会実現に寄与しています。
日本市場もさらなる成長が期待されており、今後ますますフェムテックによって女性の活躍しやすい社会環境の整備が進められるでしょう。