【追悼書評】鍼灸界の巨匠、首藤傳明先生が遺した至高の道標。著書 「経絡治療のすすめ」が語り継ぐもの

首藤傳明先生の訃報を受け、心からの哀悼の意を表します。
本年2月に首藤傳明先生がお亡くなりになりました。現代の日本鍼灸界において、これほどまでに臨床・教育・技術革新のすべてにおいて深い足跡を残し、業界全体に多大な影響を与え続けた巨匠はいません。1932年、大分県に生まれた首藤先生は、1959年に首藤鍼灸院を開業されて以来、実に90歳を超えてもなお現役として臨床の現場に立ち続け、患者様と向き合ってこられました。その生涯を賭した歩みは、まさに日本鍼灸の歴史そのものと言えるでしょう。
首藤先生は、業界の発展と後進の育成にも並々ならぬ情熱を注がれました。社団法人大分県鍼灸師会の会長を4期務めて同会の運営に尽力されたほか、日本伝統鍼灸学会の会長を9年間にわたり務めるなど、鍼灸の制度や教育の発展に大きく貢献されました。また、鍼灸師のための私塾である「弦躋塾」の塾長として、多くの鍼灸師たちにその技術と精神を直接指導されてきました。
先生の最大の功績の一つは、経絡治療を深化させ、独自の刺鍼法である「超旋刺」を確立されたことにあります。この技術革新により、臨床における鍼灸の精度と効果は飛躍的に高まりました。そして、その豊富な臨床経験から生まれた『経絡治療のすすめ』『超旋刺と臨床のツボ』『首藤傳明症例集』『やさしい鍼治療 』といった数々の著書は、今もなお多くの鍼灸師が臨床の指針とする不朽の名著となっています。
さらに、先生の情熱は国内に留まらず、広く世界へと向けられました。海外での講演活動も精力的に行い、日本鍼灸の素晴らしさを世界に伝え、国際的評価を高められました。先生の著書は英語版にも翻訳され、海外の治療家たちからも “Denmei Shutou” と親しみを込めて呼ばれ、絶大な尊敬を集めています。
しかし、首藤先生がこれほどまでに多くの人々に愛され、慕われたのは、その卓越した技術や実績によるものだけではありません。先生は生涯、「忘己利他」の精神をモットーに掲げ、それを自らの背中で体現されてきました。先生が本当に伝えたかったのは、目先の技術だけでなく、この「治療家としての心」だったのかもしれません。
常に後に続く者たちの行く手を照らし、温かく包み込んでくださった首藤先生。鍼灸界にとって欠かせない存在であった先生の、優しく、そして気高き鍼灸師としての精神は、遺された数々の名著や、先生の教えを受けた世界中の鍼灸師たちの手によって、これからも決して色褪せることなく受け継がれていくでしょう。
書籍「経絡治療のすすめ」について
首藤傳明先生が自らの臨床経験を率直に綴られた『経絡治療のすすめ』は、今なお色褪せない名著です。これから経路治療を学び始める人、一度は立ち止まってしまった人、そして長年現場に立つベテランまで、流派を超えたあらゆる鍼灸師の心に響く気づきが詰まっています。すべての臨床家に寄り添い、行く手を照らしてくれる必携の一冊です。

一見、文字が多く難解そうですが、ページをめくると驚くほどわかりやすく、中身に引き込まれていきます。全体を通して、自身の歩みを「一鍼灸師の苦労話」と謙遜される著者の、温かいお人柄が伝わってきます。 解説もユーモアを交えて「やさしい基本から一歩ずつ」進むため、難解な脈診なども無理なく理解できます。
習得には「早い人で三年、遅い人で十年、平均で五年くらい」という言葉に一瞬身が引き締まりますが、著者はすかさず「その間も自分なりの治療ができるのだから悲観することはない」と優しいエールを忘れません。かつて挫折した人、敷居を高く感じていた人の背中をそっと押してくれる、そんな温もりに満ちた一冊です。

本書のもう一つの魅力は、豊かな臨床経験が惜しみなく注ぎ込まれている点にあります。現場に裏打ちされた解説はどれも説得力に満ちており、「開くたびに新たな気づきがある」と多くのベテランが今も手元に置くほどです。
先人が歩んだ試行錯誤の軌跡と、その知恵を惜しみなく次世代へ託そうとする、慈愛に満ちた貴重な一冊と言えます。
経絡治療を世界に発信した首藤傳明を想う|経絡治療学会 会長 岡田明三

90歳を過ぎても現役で鍼療をされていた鍼灸界の巨星・首藤傳明先生がお亡くなりになりました。まことに残念至極です。
首藤先生は経絡治療学会で活動されてから日本伝統鍼灸学会の会長を長年されました。また、鍼灸経絡治療夏期大学では長年講師として鍼灸師の学術の向上に尽力されてこられました。夏期大学中ご自分の体に施術をしておられた姿を忘れることはありません。本当に鍼灸の効能を信じておられていました。
「経絡治療のすすめ」という鍼灸界のベストセラー本を執筆され、後に英訳された本は全世界鍼灸関係者のバイブルとなっています。経絡治療という日本鍼灸の素晴らしい治療体系をわかり易く説かれました。経絡治療は主治穴治療(ツボ療法)中心の中医学にはない森羅万象(宇宙)が人体に及ぼし経絡の気血変動を起こし疾病となるという生命観・疾病観による病態把握で治療するものです。是非一読してください。
首藤先生はその後も「超浅刺」「超旋刺」と云う刺鍼法を提唱されました。94歳まで長生きされたのは鍼灸治療のおかげでしょう。我々に生き方を教えていただきました。ありがとうございました。ご冥福を祈念します。
書籍「経絡治療のすすめ」の詳細
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【書籍紹介】名人・首藤傳明による経絡治療入門の名著!「経絡治療のすすめ」
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