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医療連携の現場から
東邦大学医療センター大森病院東洋医学科

医療連携の現場を紹介する本連載。第4回は東邦大学医療センター大森病院を訪ねた。同病院東洋医学科は開設から13年の歴史を持つ。診察室には換気装置が完備され、灸頭鍼を行うことも可能だが、初めから現在のように環境が整備されていたわけではないようだ。2005年の東洋医学科開設時から鍼灸外来を担当している桑名一央氏に診療室を案内してもらい、当初の様子を聞いた。

また、週1回、診療終了後に東洋医学科の医師と鍼灸師が集まって行っているカンファレンスの様子も取材し、それぞれの立場から医療機関、教育機関やそこで働いている人々、これから働くことを考えている人へのメッセージをもらった。

【病院スタッフを治療して地位向上】

桑名氏によると、東洋医学科の開設当初、鍼灸外来は週3日で、担当鍼灸師は3人。病院の人事課に鍼灸師という職種が登録されていない状態からのスタートだったという。そこからどのように鍼灸の認知度を高め、患者を増やしてきたのだろうか。

「当科の開設に尽力された三浦於菟先生(東邦大学医療センター大森病院東洋医学科客員教授)は、コメディカルにも丁寧に指導してくださる先生でした。医師と鍼灸師がフラットに対話できる当科の雰囲気は、三浦先生の影響によるところが大きいと思います」

大森病院は近隣住民に広く門戸を開いている地域密着の病院であり、風邪の患者が気軽に訪れることも多いという。まずは患者同士の間で、「あそこで鍼をやってるよ」という情報が広まった。次に、医事課のクラークや看護師、医師などの病院スタッフが、肩こりなどの治療で東洋医学科を受診するようになったという。「それから、東洋医学に興味を持った他科の医師が、例えば肺がんの術後に肋間神経痛が出ているといった患者を紹介してくれるようになりました」。

2004年度から実施されたカリキュラム改訂で、医学部教育に東洋医学が取り入れられたことも追い風になっているようだ。桑名氏は東邦大学医学部で鍼灸に関する選択講義の講師も担当している。学生同士ペアになって、合谷や曲池などの取穴とパイオネックスの貼り付けや、鍼灸師による体験施術などを行っているという。

「東洋医学の理論にも一応触れますが、それよりは手を動かして人の身体に触れること、体験することを重視しています。西洋医学の先入観が入る前の1、2年生に、この講義を通じて鍼灸を知ってもらう機会ができた頃から風向きが変わり、病院内でも鍼灸の理解者が増えてきたのを感じています」

【漢方薬や経絡経穴の用語が飛び交うカンファレンス】

毎週月曜日の診療終了後、東洋医学科の医師・鍼灸師らが集まって症例検討会(カンファレンス)を行っている。

取材日には、漢方と鍼灸を併用している症例として、肺気腫の既往がある男性患者の治療経過が報告された。まず、診療部長の田中耕一郎医師が「咳がひどい」「右肩が痛い」「疲れる」という患者の当初の主訴と、漢方薬の処方に加えて、「咳自体はよくなっているものの、誤嚥が出ている」という最近の病状を説明した。

この患者への鍼灸治療を主に担当している太田祐志氏は、肺経や腎経を補う形での選穴に加えて、手術のあとに痛くなったという右肩や、嚥下障害、去痰の局所治療を行っていることを報告。別の曜日にこの患者を診ている桑名氏は、舌苔の状態や、肩の可動域が上がった一方で、患者の関心が肩よりも誤嚥に移っていることなどを補足した。鍼灸師の國嶋徹氏から、腎経と肺経を統合する奇経治療などの話題も挙がり、活発な議論が繰り広げられた。

東洋医学科で共有している電子カルテには医師が処方した漢方薬のほか、鍼灸師の施術内容も記録されている。カンファレンスでは「廉泉」「天突」「雲門」「内関」「人迎」といった経穴名に加え、「人参養栄湯」「半夏」「小青竜湯」など漢方の用語も飛び交う。医師・鍼灸師の双方に、それらの情報から患者の症状と治療の目標を読み取るだけの技量が求められているようだ。

東洋医学科のなかで行われるカンファレンスなので、自ずと漢方や鍼灸の話が中心になるが、初診の症例は必ず、現代医学的に問題がないか整理しているという。田中氏は「適切な検査を経て、内科などでひと通り除外診断され、標準治療も行われたうえで、漢方や鍼灸の話をしています」と述べた。

【東西両医学の医師、多職種と共通言語で相互交流】

Q.鍼灸師が病院で臨床を行うメリットは。

田中   症状でいえば、不眠と神経症、不安、倦怠感、冷え、腰痛などで、精神的な要素が絡んでいるケースに鍼灸治療が有効だと感じます。精神症状を直接治すというより、身体の緊張状態を緩和することがよいのではないでしょうか。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年8月号」でお読みください。