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書評 Book Review 奥平明観著『邪気論』を読んで(森秀太郎) [2018.02.14]

月刊『医道の日本』2018年2月号では、「栄養精神医学」を提唱する精神科医の奥平智之氏にお話をうかがいました。智之氏は子供の頃から父・奥平明観氏(鍼灸師)から治療を受け、鍼灸に慣れ親しんできたそうです。明観氏の著書『邪気論 見えない身体への一歩』は、東洋医学を「見えない身体」に働きかけるものとして、「見えない身体」の病の本質である邪気を取り上げ、「気」の全体を明らかにしようと試みた1冊です。

ここでは、『医道の日本』(658号)に掲載した森秀太郎氏による『邪気論』の書評を紹介します。

 

「邪気論」という書物の表題を見ただけでは古典の解説ぐらいで、どうせ読んでもわけの分らないことが書いてあるだろうぐらいに思いこんでしまうだろう。少し頭の柔らかい人でもこの本が臨床に役立つ重要なヒントを与えてくれるものと、気づくまでには少し時間がかかる。著者が言っているように「気」については中国の気功法などで多少認識している人もあるが、この中で述べている「邪気」に関してそんなものあったかいな、と疑問に思う人が大半であろう。

 

鍼灸臨床の効果を上げるには、正確な診断、取穴、手技が三位一体でないといけない。それには技術の習練と経験が大きく影響することはいうまでもない。熟練した人には簡単なことでも、初めての人には理解できないことが多い。古書にある邪気について疑問を抱いた著者は「邪気」を如何にして捉えるかについて苦心され、一つの診断技術として邪気を掴む方法を発見された。これが本書の中心をなしている部分である。


本書は命題にかかわらず、すらすらと読める柔らかい本で、肩の凝るようなところはない。単なる古典の解説書でないことは勿論である。

 

さて、「邪気」を認識する方法として、手かざし法が詳細に述べられている。患者の皮膚から数センチ離れたところに、手をかざして術者の手に感じた感覚で邪気の動きを察知するという。私自身はまだこの方法を用いたことがないのでよく説明できないが、この方法そのものは、中国の気功法や、日本の有名な宗教にも取り入れられていて、目的と方法が異なっていてもそれほど珍しいことではない。習練さえすれば出来るのではなかろうか。手かざし法では面の観察が容易であるが、点の観察には劣るので、それを補う方法として大村氏のO-リングテストの変法として、MJ法を考案して補っている。これによって確実に邪気の変化を掴むことが出来るようになったという。

 

副題にあるように、「見えない身体への一歩」に如何に近づくか、それには何をおいてもこの著書を読んで追試をしてみることである。邪気論が一般化するためには、多くの方々の追試実験があってこそ可能である。無論この診断法が総てではないが、これまでの知見と合わせて、鍼灸臨床の成績が上がればこれに越したことはない。


蛇足ではあるが、私の所には鍼灸師の卵が臨床を習いにくる。勘の鋭い人もいれば、鈍い人もいる。毎日患者さんに接しながら技術を覚えていくのだが、圧痛、硬結等の変化にしてもなかなか掴めるようにならない。それでも入門三年くらいすると、患者さんから「先生と同じ所に手が当たるようになりましたね」と褒められるようになる。いちいち患者さんに聞かなくても、手でさわるだけで分るようにならないとプロとは言えない、と教えるけれどなかなか納得してもらえない。

 

この事から考えて奥平氏の手かざし法も、あるいは一定の訓練をしないと覚えられないものかもしれないが、本書をヒントにして邪気に挑戦されては如何だろうか。

多くの示唆を含んだ本書を読まれることをお勧めする。

(月刊『医道の日本』19994月号より転載)

 

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『邪気論』

著:奥平明観

定価:本体 2,800円+税

発刊:1999

●医道の日本社ウェブサイト

https://www.idononippon.com/book/shinkyu/1078-0.html

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