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スペイン、ポルトガルの鍼灸指圧治療家を訪ねて(2)スペインで活躍する日本人治療家たち [2012.01.23]

スペイン、ポルトガルの鍼灸指圧治療家を訪ね、治療法や東洋医療の普及の実態、動向を見聞きした鍼灸マッサージ指圧師の中山純一氏(東京衛生学園専門学校臨床教育専攻科)のレポート第2弾です。前回のレポートではスペインのマドリードで約25年開業する鍼灸師、指圧学校を営む小野田茂氏の治療の様子を 報告しました。今回はポルトガルのリスボンでの異文化体験です。

スペイン、ポルトガルで鍼灸、あん摩マッサージ指圧療法を視察したのは2011年3月3日から14日まででしたが、昨年はもう一つ、11月3日から7日まで、ブラジルのサンパウロ市を訪問しました11月4日から6日まで当地で開催されたWFAS国際鍼灸学会ブラジル大会に出席するためです。

 

ブラジルは今回報告するポルトガルの旧植民地であり、人々は同じくポルトガル語を話します。しかし、経済発展が好調なブラジルと経済危機のどん底にあえぐポルトガルの現在の勢いを反映するのか、はたまたそれがヨーロッパと南米の文化の違いなのか、街で感じる雰囲気や人々の笑顔ははっきりと認識できるほどに違いました。

 
実際、帰国時サンパウロの空港に向かうガラガラのバスの中で近くにいた乗客がたまたまポルトガル人でしたが、「ブラジルはポルトガルと似ているか」と聞いたところ意外な返事が返ってきました。

 
「全然違う。スペインのほうが似ている。

(なぜならポルトガルは)ヨーロッパだから」

 


●ディスポ鍼も信用しない

 
ポルトガルのリスボンでは、約21年前から主に良導絡による鍼灸治療と指圧教育を実践されている舟田俊夫先生の治療院を訪問しました。経済危機の影響で以前より患者は減ったとのことでしたが、舟田先生は3人の助手とともに1日約30人~40人ほどの患者を診療されていました。

 

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舟田俊夫先生とお弟子さん、助手。舟田先生は鍼灸治療の他、指圧も教えている
 
 
こちらでも大変面白い異文化体験をしました。使用する鍼は患者が自分で持ち帰り保管し、次回の治療時にまた持ってくるというシステムが採られているのですが、その理由に非常に驚きました。それは、ディスポーサブル鍼ですら信用しない人がいるというのです。

 

はじめ意味がわかりませんでしたが、滅菌のことではありません。廃棄した鍼を拾って再度使用できるという理由などで他人との混入を疑う人もいるというのです。日本では考えられない思考に本当に驚きました。

 

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リスボンの治療院で助手とともに良導絡治療をする舟田俊夫先生。治療は患者自身が持ち帰った鍼で行われる
 
 
実際の治療は良導絡による診断と治療を基本にされていますが、痛みを取るためなら何でもする、いろいろなことをしてあげるという言葉通り、レーザー、低周波、あん摩・指圧と様々な療法、技術を取り入れ治療されていました。患者満足度を上げるための貪欲な姿勢を感じました。

 

1、4●P1020920.jpg

舟田俊夫先生は指圧クラスの生徒たちに鍼灸の実演をして、日本の鍼灸の啓蒙もしている

 
また、舟田先生は筆者が伺った日の1週間前、アフリカのカボベルデという国の労働大臣の訪問を受け、国に鍼灸を導入したので教えてほしいと乞われていました。キューバ政府の援助でキューバで無償で中医学を習ったこの大臣(医師)は、より刺激量の少ない日本の鍼灸を知り、自国に導入したいと考えたそうです。

 

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舟田先生の治療院にあった経絡人形と骨模型。顔つきも仕草もヨーロピアンだが、服装と団扇は和風

 

 
●ポルトガルに広がる鍼通電療法


リスボンではもう1人、精力的な診療を長年続けていらっしゃる日本人の先生を欠くことができません。ポルトガルにおける電気鍼の研究と普及の先達として知られ、この地で医師としてクリニックを開業して35年になられる土屋光春先生です。

 
土屋先生は1975年からポルトガルにおいて電気鍼治療(鍼通電療法)を開始され、その研究および普及に尽力されてきました。その後、高周波の鍼通電が痛みに対する神経ブロックに似た作用を及ぼすことを発見し、ポルトガル内外で毎年のように電気鍼治療に関するシンポジウムを開催されてきたのですが、15年ほど前まではポルトガルでも一部の医師以外にはなかなか認められなかったそうです。それでも諦めることなく長年にわたって症例を報告し続け、ようやく広く認められるようになったと語ってくれました。

 
今では様々な患者が訪れるようになり、私が訪問した日も煙草をやめたいという中年女性、1日前から痔痛に苦しむ高齢女性、10年以上噯気(げっぷ)で苦しんでいるという若い男性など様々な症状の初診患者が訪れていました。再診患者も運動器疾患から小児喘息の男児、アレルギー性鼻炎、パニック障害の患者から回春希望の有名人まで多岐にわたり、治療法も鍼通電治療を中心に、お灸、指圧、テーピングなど様々駆使して対応されていました。

 

 

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リスボンの土屋光春先生のクリニックで、経過の長い肩関節周囲炎の患者さんの治療を依頼される筆者。後ろは土屋先生のお弟子さん。

 
土屋先生のクリニックでは同業の医師などの患者が多く、クリニックの助手の中には神経生理学の研究で医学部で優秀な成績を収めた医師もおられました。クリニックでの様子から電気鍼がポルトガルでは広く認知されていることを実感しました。


今回の視察においても、日本人の先生方が言われたことで共通していたのは、「能書きより治ること」、「治す技術」という言葉でした。

 

中山純一(なかやま・すみかず)
1973年北海道生まれ。東京都立大学人文学部史学科卒業。東海医療学園専門学校鍼灸マッサージ科卒業。神奈川県内の整形外科に勤務後、東京衛生学園専門学校臨床教育専攻科に入学。