福島県立医科大学会津医療センター 鍼灸レジデントレポート

漢方医学講座:三潴忠道・鈴木雅雄・武田真輝、循環器内科学講座:宗像源之

  8回にわたり連載してきた「福島県立医科大学会津医療センター鍼灸レジデントレポート」。最終回は、研修を統括する同センター漢方医学講座教授の三潴忠道氏、同講座准教授の鈴木雅雄氏、総合内科講師で研修医指導を統括する宗像源之氏、研修の第1期生であり、本連載を執筆した武田真輝氏に集まってもらい、研修制度(前期課程)1年間の成果と、今後の展望について語ってもらった。

三潴  本日は、約1年にわたって連載してきました鍼灸レジデントレポートのまとめということで皆さまにお集まりいただいて、研修の反省や、今後の展望について話していただければと思います。
  最初に私から、福島県立医科大学会津医療センター、ならびに漢方医学講座鍼灸部門の沿革について説明します。同センター設立の目的は、高齢化と過疎化が進み、医療過疎が深刻な問題になっている会津地域におけるへき地医療の支援でした。本学では、地域医療において東洋医学の有用性を認め、これを臨床に取り入れるという基本方針の下、漢方医学講座が設置されました。鍼灸部門の立ち上げは、私が東洋医学部門を担当するにあたって、強く大学から求められたことでもあります。
  私は、研修医時代から漢方に携わっていますが、鍼灸については専門外です。しかし、学生時代から自身の患者や師事した先生を通して鍼灸に触れる機会があり、鍼灸は臨床に非常に有益なものであるという実感を持っていました。すなわち、漢方医学は湯液診療と鍼灸治療との両輪で成り立つということです。この信念と漢方医学講座のコンセプトが合致するものであったので、私は同講座の教授を引き受けることにしました。
  講座開設にあたって、現行のはり師きゅう師国家資格の制度を確認したのですが、病院での臨床を念頭に置くと、卒後研修・卒後教育が十分ではないように感じました。ならば、本講座で鍼灸師の教育制度を立ち上げよう。そう考えたのが、研修を始めた発端でした。
  とはいえ、規定の教育を受けて国家資格を有している専門家を、卒後研修期間中であれども、ただ働きをさせてはいけないとも考えました。身分の保証と生活費の一部は支給したい。これは非常に難しいことでしたが、専門家としてのプライドを持ち続けてもらうためにも必要であるという強い思いから実現させました。研修生は、准職員という身分が与えられ、それに伴い、わずかながら手当を支給されつつ、研修を受けられるようになっています。

  研修の内容を具体的に詰めていくにあたっては、やはり私は鍼灸医学の専門家ではないので、鈴木雅雄先生や古田大河先生(福島県立医科大学会津医療センター漢方医学研究室助手)を招いて、ご意見をいただくことにしました。

【各科ローテーション方式のメリット】
三潴  研修制度は、前期課程の2年間で、鍼灸師が医療現場で臨床活動、研究・教育活動をしていくために必要な技術、知識、態度を身につけられるように、各科をローテーションで回り、ほかの職種の業務をも体験できるように計画しました。
  後期課程では、前期で得た経験を臨床に生かし、さらに磨いてもらうようになっています。具体的には、鍼灸の実臨床に携わりつつ、教育の補助や、臨床研究を実践する計画です。
  それでは鈴木先生から、会津医療センターの鍼灸研修の具体的な特徴、内容について、もう少し詳しくお話しいただきたいと思います。
鈴木  前期課程のローテーション方式は、私の母校である明治鍼灸大学(現明治国際医療大学)で行われていた、卒後研修生制度がヒントになっています。大学附属病院の診療科で2年間研修を行う制度で、最初の1年間で各科をローテーションし、2年目に科を決めて、専門性を磨く、というものでした。この研修制度に参加していた同級生や先輩・後輩を見ていても、この研修で得られる経験は非常に大きいと感じていました。
三潴  具体的に、どのようなことがありましたか。
鈴木  鍼灸師が臨床で接する患者さんの多くは、初診時すでに西洋医学で診断されている場合が多いです。だから、鍼灸師がその疾患についてよく知っていれば臨床のなかで活かせますが、知らなければ患者さんの信頼を得ることが難しくなります。卒後研修を経て臨床に出た鍼灸師を見ていると、研修で得た疾患に対する西洋医学的な理解をうまく活用しているように見受けられました。
  さらに、医師の考え方や方針は科によって、あるいは医師によっても異なることがしばしばあります。このことは私自身、母校で実体験をして驚いた点でもあります。こうした医療現場の現実にじかに触れることも、鍼灸師にとっては非常に重要なのではないかと感じました。
  こうした経緯から、新しい研修制度像を提案させていただきました。本センターにおける研修では、最初の1年間で17診療科21領域をローテーションしながら、医療現場で働ける鍼灸師とはどうあるべきかを模索、検討しつつ、さまざまな科を通して得た経験を臨床のなかで活かしていける鍼灸師を育てていきたいと考えました。

三潴  そうですね。前例がないことなので、研修生と試行錯誤をしながら、研修制度を一緒に築き上げるイメージで行っています。
  県はこの試みをまだ「制度」としては認めていません。しかし、第1期研修生として2014年の4月から武田真輝先生に来ていただき、2015年の4月から2期生が2人、今年の4月にも3期生が入職する予定です。幸いなことに、定員は県が毎年確保してくれるので、これを将来までつなげていき、確固たる「制度」として定着させたいと考えています。

【研修医と同じように指導を受ける】
鈴木  鍼灸研修生の受け入れに先立って、どの科の医師からも「自分は鍼灸師の指導はしたことがないけど、どうしたらいいの」と聞かれました。そこで私はいつも「研修医の先生と同じような感じでご指導ください」と答えていました。研修医も一緒にローテーションで回るのでそのように伝えたのですが、特に第1期生である武田先生は相当苦労したのではないかと思っています。
三潴  武田先生は明治国際医療大学卒業後の進路として、この研修制度を希望してくれましたが、どんな思いがあったのか、聞かせてください。
武田  当初は明治国際医療大学の大学院に進み、鈴木先生が在籍された内科で、病院のなかでの鍼灸を学ぼうと考えていました。しかし、進路についてより具体的に考えていた頃、ちょうどこの研修制度の立ち上げのお話を聞き、西洋医学をしっかり学びたいと考えました。また、鈴木先生や古田先生の鍼灸のスタンスを学びたかった、ということもありました。
三潴  実際に研修を受けてみて、どんなことを感じましたか。
武田  まず痛感したのは、基本知識・専門知識の重要性です。例えば血液内科でのことですが、指導医の先生に「今日からこの患者さんを診てください」と言われ、病歴の説明を受けるのですが、「この患者さんはMDSね」と言われました。自分にはその「MDS」が何なのか全く分からず、スタートの段階でつまずいてしまいました。
  さらに、単語の意味が分かっただけでは不十分な場面もあります。例えば、「MDS」が「骨髄異形成症候群」のことだと分かったところで、その経過や治療が分からないと、患者さんのところへ行って話を聞いてきてと言われても、全く質問が浮かばず、問診になりませんでした。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年4月号」でお読みください。