あはきの教育現場の今
日本工学院八王子専門学校

【「全日制」にこだわり、徹底的な実技指導】

雑誌「医道の日本2016年11月号」で企画した「鍼灸マッサージ 新教育改革の扉が開く!」にて、あはき教育が大きな変革期にあることを伝えた。改正されたカリキュラムは2018年より施行され、対応に四苦八苦しているとの声も聞こえてきている。本連載では、あはき教育の現場を実際に訪ね、各校の特徴や工夫を紹介していく。第1回は日本工学院八王子専門学校。激戦の東京都、しかも郊外に位置する同校だが、とにかく教員のマインドが、熱い。

【医療系専門学校としての役割に徹する】

2002年、学校法人片柳学園日本工学院八王子専門学校に医療専門課程が開設され、鍼灸科が立ち上がったとき、斬新なことに取り組もうと熱意を持った教員が集まった。小泉内閣による規制緩和で鍼灸師養成施設が増加し始めた頃である。最短距離で国家試験合格に導こうとする学校が散見されるなか、日本工学院八王子専門学校は「臨床に使える実力をつけさせる」ことにこだわった。一番のこだわりは夜間部のない「全日制」である。その理由を、鍼灸科の立ち上げにかかわった安齋勉氏(同校附属鍼灸院院長)は次のように説明する。

「卒業後すぐに役立つ専門的な知識と技術を、3年間『全日制』で徹底的に身につけることが当校の方針です。これは、ほかの医療系の専門学校では当たり前のことですが、鍼灸教育界では当たり前ではありません。昼間部と夜間部がある学校では、昼間部の学生の実技補講が続いていても夜間部の学生が来れば教室を出なければならない、といった制限があります。学びたいだけ学べる環境が必要ではないかと常々思っていました。また、夜間部を卒業した比較的高い年齢層は、その後勤める鍼灸院を探すのに苦労します。下積みをする機会もなく開業し、技術と経験がないから患者さんを治すことができず、結局辞めてしまうという負の連鎖が存在しています。だったら最初から全日制にして、高卒の学生を中心に実力のある医療人を育てていこうと考えました」

その言葉のとおり、現在の同校の入学生は85~90%が高卒で、まだ何色にも染まっていない若い年齢層が素直に学ぶ土壌を提供しやすくなっているという。

【全校で取り組む授業評価アンケート】

少子化と鍼灸師養成施設の増加により、現在多くの学校が定員割れを余儀なくされている。日本工学院八王子専門学校の定員は開設当初60人だったが、2018年より30人に。学費は3年間のトータルで約500万円である。あはき養成施設は東京都には19校あるなか、郊外しかも鍼灸専科、安くはない学費という条件下で学生を集められること自体が「逆に評価されている」とのこと。

「学生を集めるのは正直、苦心します。ターゲットの高校生は少子化により減る一方ですし、全日制で東京郊外なので既卒者は通いづらいでしょう。ただ、体験入学をほぼ毎週、年間40回以上実施して、少人数の来校にも対応しています。当校の方針を話せば学費のことも納得してもらえます」と山下俊樹氏(同校鍼灸科学科長)は自信をのぞかせる。

同校のスケールメリットとして381,100㎡の広大で緑豊かなキャンパスに、東京工科大学をはじめ7つのカレッジ(クリエイターズ、デザイン、ミュージック、IT、テクノロジー、医療・保育、スポーツ)があり、のびのびとした環境下で学ぶことができる。図書館の蔵書は13万3000冊。後述する美容鍼灸の研究においても、同じ敷地内の東京工科大学から機器貸与が可能だったため、より詳しい調査報告ができたとのこと。

また、片柳学園全校での取り組みである「授業評価アンケート」は、半期ごとに無記名方式で実施され、教務課が集計して各教員にフィードバックされる。授業においては担任制が敷かれ、希望する卒業生が教育補助員となって学生のサポートを行っている。

ところで、専門学校は専門的な知識と技術を身につける場だが、最近はそれ以前の一般常識やマナー、いわば「しつけ」の面で手を焼いている学校が多いと聞く。同校ではどのように対応しているのか。

「社会人1年生が新人研修で学ぶような服装や挨拶、言葉づかいについては1年次に厳しく伝えて、うるさいくらいにかかわります。反発する学生もいますが、各先生が本気で叱るので、2、3年次には成果が表れます」と山下氏。また、授業にタブレット端末を持ち込むことは現在のところ禁止しており、スマホなどの電源は切るように指導している。スマホ文化が浸透し、パソコンのキーボードを使ったことがない学生が増えているため、「コンピュータ」の授業でワード、エクセル、パワーポイントなどの操作方法を教えている。

【4限目の選択授業と実習室の開放】

同校の、「実力をつける」カリキュラムとは、実際どのようなものなのか。

まず、独自のカリキュラムである介護基礎、栄養学、スポーツストレッチ、スポーツテーピング、薬理学、漢方薬概論、スポーツリハビリテーションは国家試験にはない科目だが、鍼灸の臨床現場で役立つものとして必修授業に設定されている。

また、1年次の「はり実技」は週2回、しかも同じ内容の授業が設けられ、1年次の後期に灸頭鍼まで行えるように指導する。「きゅう実技」も別授業として行い、しっかりとした透熱灸技術の習得に力を入れている。筑波大学公式野球部トレーナーをしている教員を講師として招聘し、低周波鍼通電療法を2年次に1年間必修授業にしているのも特徴といえる。低周波鍼通電療法はスポーツの現場で利用されることが多いが、学生時代に実用できるようになるまで教える専門学校は珍しい。さらに3年次にはトリガーポイント鍼療法を学び、1年間授業を受けると臨床トリガーポイント研究会が発行するC級ライセンスを取得できるシステムも今期から導入。東洋医学系の鍼灸は中医学の座学と実技である。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年4月号」でお読みください。

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