手技療法の立場から診る運動連鎖
~股関節伸展に対する介入例より

沓脱正計 氏

Ⅰ. はじめに

運動連鎖とは、「関節の運動がほかの隣接する関節へ影響を及ぼす」という意味を持ち、姿勢や運動・動作の分析、エクササイズを選択するうえでよく用いられる概念である1)。筆者は手技療法を専門としていることから、本稿では手技の立場で運動連鎖を診るということについて私見を述べたのち、股関節伸展制限に伴う足底の痛みを呈した症例を提示する。また、手技療法による評価から介入の実際を部分的ながら紹介しつつ、セルフケアならびに他職種連携の必要性についても述べたい。

Ⅱ. 運動機能障害に対する介入手段としての手技療法と運動療法

異常を起こした運動機能の回復には、「他動運動」⇒「自動介助運動」⇒「自動運動」の段階があり、手技療法は他動運動的な、運動療法は自動運動的な介入を用いるという特徴を有する。いわば手技療法は「動かない」⇒「動く(動かせない)」という機能回復までを、運動療法は「動く(動かせない)」⇒「動かせる」という機能向上までを、それぞれより得意としているとも表現できるだろう。

運動連鎖の概念を用いると、機能障害によって正常に「動かない」関節が生じれば、隣接関節を始めとした複数の部位が動きを代償するようになる。その結果、一部の関節が「動かしすぎ」の状態となって過負荷がかかり、さらなる機能障害が生じて疼痛性疾患などに波及、拡大していくことになる。

そのため筆者の臨床では、運動連鎖を視野に入れながら診る場合も、動きのなかで「動かない」部位を評価によって検出し、徒手的な介入によって「動く」状態にまで回復させることが中心となる。そして、より上手に・安定して・力強く・素早く「動かせる」段階までの回復が望まれる場合は、必要な運動療法が提供できるよう連携しているトレーナーへ紹介している。

続いて、股関節伸展制限への触診による評価と徒手的な介入法の一例を紹介し、股関節伸展制限が下肢症状に及ぼしていた影響について症例を提示する。

Ⅲ. 股関節伸展制限に対する動的・静的触診と介入例

機能的な制限を特定するには、評価の最終段階で軟部組織の質的な変化を、触診によって把握しておく必要がある。そこで筆者は、パトリックテストなどの整形外科テストに加え、以下の触診法を併用している。また、介入方法としてはActive soft tissue release(ASTR)を紹介する。

 

※つづきは、雑誌「医道の日本2019年7月号」でお読みください。



⇒松本不二生氏と沓脱正計氏がASTR(Active Soft Tissue Release:アスター)を詳しく解説する書籍『痛みの臨床に役立つ手技療法 ASTR』の情報はこちらから。

⇒上記『痛みの臨床に役立つ手技療法 ASTR』を映像化したDVD『【DVD】痛みの臨床に役立つ手技療法 ASTR』の情報はこちらから。

お得な定期購読のご案内

Apple、Apple のロゴは、米国および他の国々で登録された Apple Inc. の商標です。Mac App Store は Apple Inc. のサービスマークです。
Android、Google Play、Google Play ロゴは、Google Inc. の商標です。