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舞台裏を支えるアスレティックトレーナー
㈱メジャー・トレーナーズ 河野智和氏インタビュー [2009.07.13]

スポーツ選手のコンディショニングやトレーニング指導を行うアスレティックトレーナー。その多くが鍼灸マッサージ師の資格を取得しています。学校でも専門学科を増設するところが増えました。アスレティックトレーナーの活躍の場はスポーツシーンだけではありません。今回は、華やかな舞台に立つミュージシャンや俳優をヘルスケアの面で陰ながら支える、株式会社メジャー・トレーナーズの河野智和氏にお話を聞きました。

 

――㈱メジャー・トレーナーズはいつごろ設立されたのですか。

 

河野 30年前の1979年、小守スポーツマッサージ療院から独立した川島英夫(代表取締役)が創立しました。現在のスタッフは約30人です。鍼灸師、マッサージ師等の資格を持つ者が8割を占め、そのなかで柔道整復師や日本体育協会認定アスレティックトレーナー(AT)を取得している者もいます。


業務は、スポーツの競技現場やスポーツジム、コンサート会場などに出向き、クライアントのコンディショニングやトレーニング指導などを行います。そのほか、私の仕事としては、適材適所にスタッフを送り、セッティングをしています。アスレティックトレーナーとして現場で必要とされる能力は相手によって違いますし、場所や状況に応じて変わります。現場に出向いてそれらをチェックするのも私の役割の一つです。

 

 

――代表取締役の川島さんは1976年に渡米し、ドジャーズなどでトレーナーシステムを研修し、その後日本人メジャーリーガーのパイオニアとなる投手などをサポートしていたそうですね。河野さんも、トップアスリートだけでなくミュージシャンや俳優のコンディショニングをしているとのことですが、ビッグネームの方々ですか?


河野 お名前は、ごめんなさい、ちょっと言えません。アスレティックトレーナーのなかには「誰々さんの専属トレーナー」と積極的に言う人もいます。しかし、人間誰もが舞台の裏のことは知られたくないですよね。アスレティックトレーナーはクライアントの舞台裏を否が応でも見ます。だからわれわれメジャー・トレーナーズのスタッフは「専属」という言葉は使わないようにしています。


あるミュージシャンのツアーには、コンディショニングのためのスタッフが11人帯同します。弊社のスタッフがそのなかに7人いて、鍼灸師、カイロプラクター、医師、看護師、ボイスセラピストとともに帯同し健康管理を行っています。クライアントはいわば超メジャーなミュージシャンですが、だからといってわれわれはそのことを公言しません。ご本人の了承がとれている場合は言ったりすることもありますが、基本的には自分で自分の仕事のことを言わないのが「メジャトレ魂」の一つです。専属ではなく、利用したい方が利用したいときにわれわれを利用してくださればありがたいと思います。

 

――メジャトレ魂とは?


河野 その時間、その人に尽くすということですね。食べ物にたとえるなら、われわれの業務は定食や決まったメニューしか出さないレストランの形態ではなく、あくまでもケータリングサービスです。クライアントの要望に合わせた幅広いトレーナーサービスを現場で行います。舞台の合間のわずかな時間しかない場合なら、衣装を着たままできる施術を考えます。急性外傷なら徒手で何かをするより氷嚢でアイスマッサージをしたほうがいい場合もある。相手のことを考えて、その場でできることをやるのがメジャトレ魂です。

 

 

――舞台女優のコンディショニングを担当するようになったと聞いていますが、何かきっかけがあったのですか。


河野 その方が70代で怪我をしたとき、知り合いを通じて弊社代表の川島に話があり、治療をしました。芸を長く続けるためには身体のバランスと筋肉を向上させたほうがいいのではないかとアドバイスをし、指導したのがきっかけです。

 

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――その後、河野さんが担当されるようになったのですね。その女優さんが、スクワットなどトレーニングのことをテレビで話しているのを見たことがあります。長年の舞台を、河野さんが陰で支えていらしたのですね。

河野 いや、一番はご本人の情熱です。スクワットだけが注目されましたが、実際のトレーニングは10種類以上の組み合わせです。現在は公演が終わってからの疲労回復が主です。劇場で、短い時間でできるマッサージやストレッチを行っています(右写真2つは舞台裏のセッティングの様子)

 

 

――アスレティックトレーナーの仕事は24時間年中無休だそうですが。

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河野 新しくスタッフとして入ってくる人たちには「消防や警察と同じだと思ってね」と言っています。スポーツ競技、舞台、コンサートなどは年末年始や夏休みは関係なく、とくに世の中が休みのときにイベントが詰まっています。プライベートの時間に電話がかかってきて「今舞台で足をひねっちゃって」と言われたらどうするか。弊社のビジネスアワーは10:00~20:00ですが、「助けて」と電話が入れば治療院を開けて必要な処置をしますし、現場に飛んでいきます。

 

メジャーな芸能人は通常では考えられないような過密なスケジュールが組まれています。捻挫や骨折をしても舞台に立たなければならない時もある。とくに主役は代打がききません。普通なら病院でギプス固定されて終わるところを、リスクを理解しながらテーピングなどでコントロールし、必要な処置を行い、ときには演出を変えてもらって、舞台に立っていただくのがわれわれの役割です。そういったことに時間や曜日は関係ありませんからね。アスレティックトレーナーの仕事は24時間年中無休の覚悟でないとできません。


われわれは長い間、そうやってずっとクライアントのSOSに対応してきたので、ステージを仕事場とする世界の方々から「怪我をしたときはメジャー・トレーナーズに電話をしろ」と言っていただいています。同業他社は増えましたが、ありがたいことに宣伝をしなくても口コミで紹介があります。

 

 (次週に続く)


※次回はプロとしてのアスレティックトレーナーの心構え、などです。

 

 

河野智和(こうの・ともかず)


株式会社メジャー・トレーナーズ取締役
1968年東京都生まれ。日本鍼灸理療専門学校本科卒。鍼灸マッサージ師、日本体育協会アスレティックトレーナー。1988年より株式会社メジャー・トレーナーズ所属。
様々なフィールドでトレーナー活動を行い、現在は「トレーナー」の活躍の場を広げることを主眼においている。今年からはアメリカ・メジャーリーグへのインターンシップ事業を行うJBATS(Japan Baseball Athletic Trainers Society)の事務局業務も兼務している。

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