美容鍼灸の研究が今、求められている

安野富美子 氏・山崎さつき 氏

しわ・くすみ・たるみの改善効果や、リフトアップ効果など、さまざまな美容効果が謳われ、施術テクニックも多様化するなか、美容鍼灸の科学的な研究はどれだけ進んでいるのだろうか。レーザースペックル血流画像化装置を使って美容鍼灸の研究を進めている、東京有明医療大学の安野富美子氏と山崎さつき氏に話をうかがった。

【テレビ番組の制作意図と放送後の影響】

――昨年9月24日、NHKで「東洋医学 ホントのチカラ~科学で迫る 鍼灸・漢方薬・ヨガ」が放送され、安野先生が行った血流計による美容鍼灸の研究が番組で紹介されました。番組の反響はいかがでしたか。

安野   東洋医学をテーマに番組づくりが行われるときは、漢方を中心に取り上げられることが多いのですが、今回の番組は鍼灸がメインだったので、すごく反響がありましたね。翌日から予約の電話が殺到して、東京有明医療大学附属鍼灸センターにある16室の施術室がすべて埋まる日が続きました。今でもその反響は続いています。全国から問い合わせがあるので、遠方の方には、なるべくお近くの鍼灸院を紹介するようにしています。制作の方によると、番組の再放送を希望する視聴者の声も多いそうです。

――美容鍼灸を受けたい患者さんから反響があったということでしょうか。

安野   番組を観て来院した患者さんは、美容目的の方は少ないですね。多くの患者さんはご高齢の方で、何らかの疾患でお困りの方が、番組で鍼灸治療を知り、治療を希望して来院されています。

安野   また、番組で東京都健康長寿センターの堀田晴美先生が紹介された1)、自分で会陰部の皮膚をローラー鍼で刺激し、過活動膀胱による頻尿を改善させるというセルフケアへの関心が高く、こちらの問い合わせも多かったです。

――番組では、東京有明医療大学附属鍼灸センターを女性タレントが訪れて、美容鍼灸を実践するVTRが流されましたが、視聴者は美容鍼灸に限らず、鍼灸治療そのものに関心を持ったということですね。

安野   そうですね。番組内では、レーザースペックル血流画像化装置を用いて鍼灸治療による顔面部血流の変化を紹介しました。そのことが、鍼灸の効果を科学的に示したこととして、美容効果への期待につながっているように思います。

実は、この装置を用いた研究がテレビで取り上げられるのは、今回が初めてではありません。2017年6月に放送されたNHK BSプレミアム「美と若さの新常識 漢方で無理なくスリム&ビューティー」では、日本薬科大学の丁宗鐵先生が漢方について、私がツボ刺激についてお話をしたのですが、そのときにも、私たちの研究が取り上げられました。

一般視聴者は、やはり美容への関心が高いため、美容鍼灸をテーマで取り上げながら、その科学的な裏づけも欲しいというのが、制作側の意図なのだと思います。番組ゲストとして、「医道の日本」の誌面(2017年5月号「私と鍼灸」)にも登場したフリーアナウンサーの高橋真麻さんのほか、元宝塚歌劇団月組の男役で女優の遼河はるひさん、お笑い芸人のバービーさんがスタジオにいらしていて、みなさん鍼灸を美容やご自身の体調管理に活用されていました。


1) Iimura K,Watanabe N,Masunaga K,Miyazaki S,Hotta H,Kim H,Hisajima T,Takahashi H,Kasuya Y.Effects of a Gentle, Self-Administered Stimulation of Perineal Skin for Nocturia in Elderly Women: A Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Crossover Trial.PLoS One 2016; 11(3): e0151726.

安野   一般の方の関心が高い分野だけに、今後、どのようなエビデンスを出していくのかが、美容鍼灸は特に問われることになるのではないでしょうか。

【耳鍼は顔面部の血流にどんな影響を及ぼすのか】

――安野先生と山崎先生が行っている研究について、詳しく教えてください。

安野   まず、2015年に、耳介への刺激が人体に与える影響を明らかにするために、レーザースペックル血流画像化装置を用いて、研究を行いました2)。レーザースペックルは、運動している赤血球にレーザー光を照射することで、相対的な血流量の指標値を算出する機器で、サーモグラフィーよりも環境温度の影響を受けにくいとされています。

この研究のきっかけは、明治東洋医学院専門学校の高野道代先生が耳鍼によるリフトアップ効果を全日本鍼灸学会で報告されていらっしゃるのを拝見したことです。その際に、実際に高野先生に施術していただき、施術後に顔がリフトアップするのを目の当たりにして、2014年に「耳穴のリフトアップ効果について」の研究3)を高野先生と一緒に行いました。その翌年にこの研究を行ったわけです。

山崎   研究方法としては、耳鍼を貼付するときに手で耳介に触れることによる影響を検証するために、健康成人男女10人(男性3人、女性7人)を対象にランダム化比較試験を行い、耳介を揉捻したときの顔面部血流の反応について検討しました。耳介を揉捻したときの顔面血流を観察したところ、一過性の血流増加がみられましたが、その反応は3分以内に消失しました。そこで、耳介に触れることにより起こる反応を除去するように、次の研究を行いました。


2) 山崎さつき, 安野富美子, 古賀義久, 坂井友実. 耳鍼が顔面部の血流に与える影響について. 全日本鍼灸学会雑誌 2018; 68(4): 265-73.

3) 高野道代, 安野富美子, 古賀義久. 耳穴のリフト アップ効果について. 全日本鍼灸学会学術大会抄録集 2014( 63): 176.

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年2月号」でお読みください。

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