医療連携の現場から
帯津三敬病院

医療連携を実践している鍼灸師の現場を取り上げる本連載の第7回は、帯津三敬病院を取材。同院はもともと東京都立駒込病院(現:がん・感染症センター都立駒込病院)の外科医長であった帯津良一氏(帯津三敬病院名誉院長)が、西洋医学だけではなく漢方や鍼灸といった中国医学を取り込んだ「中西医結合」を実現するため、1982年に設立された。それから現在に至るまで、漢方ならびに鍼灸が治療法の一つとして確立された環境を継続している。同院の鍼灸師もまた医師や看護師、ソーシャルワーカーといったスタッフと共働し、信頼を得ているようだ。西洋医学と東洋医学が共存する同院において、鍼灸師はどのような役割を担い、介入しているのかについて聞いた。

【中国で見た鍼麻酔に可能性を見出す】

帯津三敬病院は、設立当初から漢方と鍼灸を取り入れた「中西医結合」を謳っている。もともと外科医としてがん治療にあたっていた帯津氏が同院を設立するに至ったきっかけとは何だったのだろうか。

「私が東京都立駒込病院でがん治療を行っていた当時は、再発してしまう患者が多かったのです。それで『外科手術だけでは何か足りない』と思うようになりました。西洋医学は病気の局所を見るには長けた医学ですが、その近辺や、ひいては人間全体との関係に対しては、なおざりにしている部分がありました。その関係を見る医学こそ、中国医学だったのです」

中国医学を取り入れることを思いついた帯津氏は1980年9月、北京市にある肺がん研究所の附属病院へ向かった。そこで帯津氏が目にしたのは、鍼麻酔だけで外科手術を行っている様子だった。
肺がんを手術していたその患者には、左手の外関、三陽絡に1本ずつ鍼を刺しただけであり、全身麻酔は施されていなかった。帯津氏が執刀医に「鍼麻酔は誰にでも効くのか?」と聞くと、「素直な人には効く。しかし素直かどうかは患者を少し見ただけでは分からないので、全員が素直でないものとして、まず素直になってもらう必要がある。そのために、気功を3週間やる」と答えたとのこと。帯津氏はその話を聞き、鍼麻酔と気功ががん患者のケアおよび予防に使えると考えた。

帰国したのち、病院を設立するにあたって西洋医学を帯津氏と副院長が担当し、漢方については帯津氏が習得するまでの間、2人の医師にパートタイムで担当を依頼した。また、鍼灸については、帯津氏が当時通っていた八光流柔術の同門であった小林健二氏(現・小林接骨院院長)ともう一人に依頼し、気功は帯津氏が担当し、「中西医結合」のスタートを切る。

しかし、設立当時はまだ世間における中国医学の認知度も低くかった。帯津氏はある雑誌の取材で、「ほかの医師から不審に思われなかったのか」と聞かれたこともあったという。また、患者からも「風邪に葛根湯を処方することは聞いたことがあるが、がん治療に漢方薬が効くのですか?」と質問されたことがあった。

「でも、今では患者のほうから漢方薬を希望するようになってきましたね」と、世間の目が当時とはだいぶ変わってきている実感があると帯津氏は話す。

同院の設立から5年後の1987年には日本ホリスティック医学協会を立ち上げ、同院の医療の形を「中西医結合」からより大きな枠組みである「ホリスティック」に移行した。
【患者が主導権を持つ主客非分離の考え】

現在の帯津三敬病院では、帯津氏の診察日である月曜日と金曜日に鍼灸治療が行われており、鍼灸師の柳沼良氏が一人で担当している。柳沼氏は2013年3月まで同院に常勤していたが、現在は東京都足立区にて鍼灸治療院 和良楽を開業しながらの勤務である。

鍼灸治療は院内に設けられた「鍼灸あんまマッサージ室」にて行われる。室内にはベッドが2床あり、1日に外来の患者を3~4人、また入院患者8人へ治療を行っている。患者に施術するまでの流れについて柳沼氏に聞いた。

「帯津三敬病院のコンセプトとして、医療関係者と患者との分け隔てをなくし、また対等な存在として接する『主客非分離』という考えがあります。基本的には患者が主人公ですので、私たちが誘導するよりも、患者さんが発見していく、自主性を重んじます。なので、帯津先生と患者の対話のなかで『鍼灸』という言葉が出たとき、私に依頼があります」

帯津氏が提唱するホリスティック医学においては多様な治療法を認めており、患者との相談によってその方針を決めていく。患者自身が治療に主体的にかかわるため、帯津氏に診察を受ける前の空き時間を利用して、自ら鍼灸を受けに「鍼灸あんまマッサージ室」を訪れる患者もいる。

もちろん、患者が主導権を持ち、自身の症状や治療法などについて調べた結果、認識している内容が事実と異なることもある。そのような場合は、どうするのか。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年5月号」でお読みください。

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